ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【4】
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
桃子「おい酉居、お前わざわざここまでケンカを売りに来たのか?」
酉居「いや、別に。率直な感想を口にしたまでだ」
桃子「それがこの店が好きなあたいや、光姫のことまで馬鹿にしてるって分かってるのかい?」
酉居「飛躍しすぎだな。個人の趣味までとやかく言うつもりはない。店についての感想とに、関連性は存在しない」
桃子「相変わらず口は達者な奴だな……。もう用は済んだんだろ?んじゃさっさと帰れ帰れ!」
酉居「そうさせてもらおう。無教養で粗暴な女に襲われないうちにな」
桃子「鼻息だけで飛びそうなヒョロい身体なんか相手にするか。馬鹿」
最後まで居丈高な姿勢を崩さぬまま、酉居は行ってしまった。
吉音「何あれ。なぁ~にあれぇっ!やな感じぃ~っ!」
桃子「いかにも俺は偉いんだぜ、みたいな言い方。ムカつく!」
吉音「こぉーんなキュって目して、ヘビみたい。ヨリノブの方がかわいいよ!」
酉居が去るなり、ふたりは姦しく騒ぎ始めた。あまりの剣幕に、前の道を通る人も、何人か足を止めてこちらをうかがっている。
悠「まぁまぁそんないきり立たずに……店先で騒いでると、ただでさえ少ないお客さんがもっと減ってしまうじゃないですか」
吉音「もおっ。悠のお店が悪くいわれたのに、どーして怒らないのっ?」
悠「お客が増えるんだったら喜んで怒るさ……それにエライひと向けの店でせないことも確かだし、実際ボロイし」
吉音「自分でそんなこと、いわなくてもいーのに……」
吉音も用心棒ではあるが、半分店員の様なものだ。腹を立てるのも分かる。だがそれ以上に、奴の言葉をまともに取り合うのは労力の無駄だ。
桃子「アイツも、将軍がちゃんといた頃はもうちょっとおとなしかったんだけどなぁ……」
そんな鬼島さんのつぶやきが、少し引っかかった。
ー大江戸学園大通りー
酉居が店に来た翌日の放課後。校舎を出たおれと吉音は、小鳥遊堂への帰路を歩いているところだった。
吉音「あ……ねーねー、悠。あれって何かな?」
吉音の口にした「あれ」とは、道の前方にできている人だかりのことだ。人だかりは道の端から端まで広がっている。
悠「なんの集まりかは知らないが通行の邪魔だな」
吉音「うん。だねぇ」
この道を迂回するとなると、かなり大回りしなくてはいけないことになる。
悠「困ったなぁ」
吉音「困ったねー」
などと話しながら歩いている内に、おれたちはひとだかりのところまでたどり着いていた。そして、ここまで近づいたところで、どうして人だかりが出来ているのかがわかった。
悠「バス、だな」
吉音「うん。バスだね」
人だかりの向こうにあったのは、横向きになった一台のバスだった。人だかりが道をふさいでいるのでは無く、このバスに道を塞がれたせいで立ち往生しているようだった。
悠「なあ、このバスどしたの?」
男子生徒A「さあね、俺も知らんよ。ただ、パンクしているうえに誰ものっていないみたいで、動きそうにないらしいぜ」
悠「ふーん」
男子生徒A「まっ、急ぐんなら他の道を使うんだな。明日には撤去されてるだろうぜ」
悠「みたいだな。」
明日には、か。確かに理由はどうあれ、これだけ騒ぎになっていれば、明日までには撤去されているだろう。
桃子「おい酉居、お前わざわざここまでケンカを売りに来たのか?」
酉居「いや、別に。率直な感想を口にしたまでだ」
桃子「それがこの店が好きなあたいや、光姫のことまで馬鹿にしてるって分かってるのかい?」
酉居「飛躍しすぎだな。個人の趣味までとやかく言うつもりはない。店についての感想とに、関連性は存在しない」
桃子「相変わらず口は達者な奴だな……。もう用は済んだんだろ?んじゃさっさと帰れ帰れ!」
酉居「そうさせてもらおう。無教養で粗暴な女に襲われないうちにな」
桃子「鼻息だけで飛びそうなヒョロい身体なんか相手にするか。馬鹿」
最後まで居丈高な姿勢を崩さぬまま、酉居は行ってしまった。
吉音「何あれ。なぁ~にあれぇっ!やな感じぃ~っ!」
桃子「いかにも俺は偉いんだぜ、みたいな言い方。ムカつく!」
吉音「こぉーんなキュって目して、ヘビみたい。ヨリノブの方がかわいいよ!」
酉居が去るなり、ふたりは姦しく騒ぎ始めた。あまりの剣幕に、前の道を通る人も、何人か足を止めてこちらをうかがっている。
悠「まぁまぁそんないきり立たずに……店先で騒いでると、ただでさえ少ないお客さんがもっと減ってしまうじゃないですか」
吉音「もおっ。悠のお店が悪くいわれたのに、どーして怒らないのっ?」
悠「お客が増えるんだったら喜んで怒るさ……それにエライひと向けの店でせないことも確かだし、実際ボロイし」
吉音「自分でそんなこと、いわなくてもいーのに……」
吉音も用心棒ではあるが、半分店員の様なものだ。腹を立てるのも分かる。だがそれ以上に、奴の言葉をまともに取り合うのは労力の無駄だ。
桃子「アイツも、将軍がちゃんといた頃はもうちょっとおとなしかったんだけどなぁ……」
そんな鬼島さんのつぶやきが、少し引っかかった。
ー大江戸学園大通りー
酉居が店に来た翌日の放課後。校舎を出たおれと吉音は、小鳥遊堂への帰路を歩いているところだった。
吉音「あ……ねーねー、悠。あれって何かな?」
吉音の口にした「あれ」とは、道の前方にできている人だかりのことだ。人だかりは道の端から端まで広がっている。
悠「なんの集まりかは知らないが通行の邪魔だな」
吉音「うん。だねぇ」
この道を迂回するとなると、かなり大回りしなくてはいけないことになる。
悠「困ったなぁ」
吉音「困ったねー」
などと話しながら歩いている内に、おれたちはひとだかりのところまでたどり着いていた。そして、ここまで近づいたところで、どうして人だかりが出来ているのかがわかった。
悠「バス、だな」
吉音「うん。バスだね」
人だかりの向こうにあったのは、横向きになった一台のバスだった。人だかりが道をふさいでいるのでは無く、このバスに道を塞がれたせいで立ち往生しているようだった。
悠「なあ、このバスどしたの?」
男子生徒A「さあね、俺も知らんよ。ただ、パンクしているうえに誰ものっていないみたいで、動きそうにないらしいぜ」
悠「ふーん」
男子生徒A「まっ、急ぐんなら他の道を使うんだな。明日には撤去されてるだろうぜ」
悠「みたいだな。」
明日には、か。確かに理由はどうあれ、これだけ騒ぎになっていれば、明日までには撤去されているだろう。