ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【4】
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
桃子「よう、来たぜ」
吉音「いらっしゃいませ~!」
悠「鬼島さん、いつみご贔屓にありがとうございます」
桃子「悠はいつもムッツリしてるなぁ。新とは大違いだ」
悠「……あなた方の底が抜けているだけかと思いますが」
桃子「底?底ってどこだ……?足の裏かな。別に穴は開いてないけど」
悠「ちゃうちゃう。底抜けっていうのは比喩の一種です。器に底が無いといくら水を注いでもいっぱいになることは無いだろう。それに例えて……」
桃子「なんで器の話しがでてくるんだ。あたいたちのことじゃなかったのか?」
悠「だーかーらたとえ話ですよ。雪のように白い肌とか、貴女は僕の太陽だ、とかと同じです」
桃子「……新、悠のいってることわかるか?」
吉音「んーん、わかんない」
桃子「小僧、なにか難しいこといって、あたいたちをけむにまこうとしているな!」
悠「むしろおれの方が、強引に納得させられようとしている気がするんですけどー」
話しが進まないどころか、説明すればするだけ戻っていく。別に悪気があってやってるんじゃないってことは分かるんだが。
桃子「まあそんなことはどうでもいいんだよ。悠、団子くれ」
悠「はいはい、ただいま」
桃子「三人前だぞ!」
悠「……そういう無駄遣いをするから、お金が無くなるんじゃないですか?」
小鳥遊堂としては儲かるから良いんだが。
桃子「なにを言う。健康な体は食事から作られるんだぞ」
吉音「お腹が空いていると、何をしても楽しくないんだよ。食べるって凄いことなんだよっ」
悠「新にいわれるとすごく説得力あるな」
吉音「でしょでしょ~?」
そういう得意げな顔をしなければな。吉音と鬼島さんは随分仲が良い様子だ。ふたりとも、話していると細かいことなんてどうでもよく思えてくるくらいの豪快さがある。そのあたりの波長が合うのか、ふたりの間でも通じ合うものがあるのかもしれない。
悠「うわっ!」
注文を持って戻ると、衝撃的な映像がおれを迎えた。話に夢中になって縁台に身を乗り出した鬼島さん。それはいいんだけど、無防備に突きだされたお尻。ホットパンツの隙間からパンツが丸見えになっている。
桃子「ん、どしたぁ?」
悠「いやいや、何でも無いっすよ!」
動揺のあまり思わず見たものを否定してしまうおれ。
桃子「ん~。だったら、いいんだけどよ」
悠「はは、ははは…」
吉音と鬼島さんがきょとんとしておれの顔を見ている。そこに……
「小鳥遊堂というのは、ここで間違いないのかな?」
おっと、別の客だ。
悠「あー、ここは小鳥遊堂です。いらっしゃいませ」
酉居「ふん……これは想像以上だな」
む……こいつは見覚えがある。確か老中の地位にある酉居葉蔵という奴だ。頭キレるが、庶民感覚が薄く、一般生徒からの人気はあまりないという評判だ。
桃子「なんだ、酉居じゃないか。こっちまで来るなんて珍しいな」
酉居「別に俺が来たくて来たわけではない。こんな下町まで望んでくるわけがあるか」
桃子「ああそうかい。さすがお偉いさんは違うねぇ」
おれが学園に来てからそれなりに経ったし、おぼろげながら権力構造も見えて来た。徳河の名の威力は文字通りの全校生徒をひれ伏させるほどだし、上層民ばかりの武家屋敷街なんてのもある。この酉居もそっち方面の人だし、おれ達とは同じ学園の中にいてさえ、生活圏が違っている。
吉音「…………」
好んでこっちに居る吉音は、本当のところどう思ってるんだろうか。
桃子「んでどうしたんだい。用があんならさっさと済ませて行きなよ」
酉居「いわれずとも。今その最中だ。水都さんが、小鳥遊堂という下町の茶屋に目を掛けていると聞きやってきたのだが……よもやこれほどにみすぼらしい茶屋だったとはな。隣の間違いではないのか?」
桃子「……あ?なんだって?良く聞こえない」
酉居「水都さん贔屓の店が、こんなにみすぼらしいところだとは思わなかった、といった」
吉音「ねぇねぇ、みすぼ、らしいってなに?」
悠「みすぼらしい、ボロくてお粗末な店のことだよ」
吉音「えぇ~っ、そんなことないよ!お茶もお菓子も美味しいし、悠はちゃんとご飯もくれるもんっ!」
酉居「フン……」
酉居の高圧的な物言いに、吉音も鬼島さんも柳眉を逆立てている。もちろんおれも良い気分じゃないが、それでも酉居の言葉には、頷かざるを得ない。本来であれば、この小鳥遊堂のような何の変哲もない茶屋は、光姫さんの来るような所じゃない。名のある人物が何をしに来ているのか、気になって視察に来たって所だろう。
桃子「よう、来たぜ」
吉音「いらっしゃいませ~!」
悠「鬼島さん、いつみご贔屓にありがとうございます」
桃子「悠はいつもムッツリしてるなぁ。新とは大違いだ」
悠「……あなた方の底が抜けているだけかと思いますが」
桃子「底?底ってどこだ……?足の裏かな。別に穴は開いてないけど」
悠「ちゃうちゃう。底抜けっていうのは比喩の一種です。器に底が無いといくら水を注いでもいっぱいになることは無いだろう。それに例えて……」
桃子「なんで器の話しがでてくるんだ。あたいたちのことじゃなかったのか?」
悠「だーかーらたとえ話ですよ。雪のように白い肌とか、貴女は僕の太陽だ、とかと同じです」
桃子「……新、悠のいってることわかるか?」
吉音「んーん、わかんない」
桃子「小僧、なにか難しいこといって、あたいたちをけむにまこうとしているな!」
悠「むしろおれの方が、強引に納得させられようとしている気がするんですけどー」
話しが進まないどころか、説明すればするだけ戻っていく。別に悪気があってやってるんじゃないってことは分かるんだが。
桃子「まあそんなことはどうでもいいんだよ。悠、団子くれ」
悠「はいはい、ただいま」
桃子「三人前だぞ!」
悠「……そういう無駄遣いをするから、お金が無くなるんじゃないですか?」
小鳥遊堂としては儲かるから良いんだが。
桃子「なにを言う。健康な体は食事から作られるんだぞ」
吉音「お腹が空いていると、何をしても楽しくないんだよ。食べるって凄いことなんだよっ」
悠「新にいわれるとすごく説得力あるな」
吉音「でしょでしょ~?」
そういう得意げな顔をしなければな。吉音と鬼島さんは随分仲が良い様子だ。ふたりとも、話していると細かいことなんてどうでもよく思えてくるくらいの豪快さがある。そのあたりの波長が合うのか、ふたりの間でも通じ合うものがあるのかもしれない。
悠「うわっ!」
注文を持って戻ると、衝撃的な映像がおれを迎えた。話に夢中になって縁台に身を乗り出した鬼島さん。それはいいんだけど、無防備に突きだされたお尻。ホットパンツの隙間からパンツが丸見えになっている。
桃子「ん、どしたぁ?」
悠「いやいや、何でも無いっすよ!」
動揺のあまり思わず見たものを否定してしまうおれ。
桃子「ん~。だったら、いいんだけどよ」
悠「はは、ははは…」
吉音と鬼島さんがきょとんとしておれの顔を見ている。そこに……
「小鳥遊堂というのは、ここで間違いないのかな?」
おっと、別の客だ。
悠「あー、ここは小鳥遊堂です。いらっしゃいませ」
酉居「ふん……これは想像以上だな」
む……こいつは見覚えがある。確か老中の地位にある酉居葉蔵という奴だ。頭キレるが、庶民感覚が薄く、一般生徒からの人気はあまりないという評判だ。
桃子「なんだ、酉居じゃないか。こっちまで来るなんて珍しいな」
酉居「別に俺が来たくて来たわけではない。こんな下町まで望んでくるわけがあるか」
桃子「ああそうかい。さすがお偉いさんは違うねぇ」
おれが学園に来てからそれなりに経ったし、おぼろげながら権力構造も見えて来た。徳河の名の威力は文字通りの全校生徒をひれ伏させるほどだし、上層民ばかりの武家屋敷街なんてのもある。この酉居もそっち方面の人だし、おれ達とは同じ学園の中にいてさえ、生活圏が違っている。
吉音「…………」
好んでこっちに居る吉音は、本当のところどう思ってるんだろうか。
桃子「んでどうしたんだい。用があんならさっさと済ませて行きなよ」
酉居「いわれずとも。今その最中だ。水都さんが、小鳥遊堂という下町の茶屋に目を掛けていると聞きやってきたのだが……よもやこれほどにみすぼらしい茶屋だったとはな。隣の間違いではないのか?」
桃子「……あ?なんだって?良く聞こえない」
酉居「水都さん贔屓の店が、こんなにみすぼらしいところだとは思わなかった、といった」
吉音「ねぇねぇ、みすぼ、らしいってなに?」
悠「みすぼらしい、ボロくてお粗末な店のことだよ」
吉音「えぇ~っ、そんなことないよ!お茶もお菓子も美味しいし、悠はちゃんとご飯もくれるもんっ!」
酉居「フン……」
酉居の高圧的な物言いに、吉音も鬼島さんも柳眉を逆立てている。もちろんおれも良い気分じゃないが、それでも酉居の言葉には、頷かざるを得ない。本来であれば、この小鳥遊堂のような何の変哲もない茶屋は、光姫さんの来るような所じゃない。名のある人物が何をしに来ているのか、気になって視察に来たって所だろう。