ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【3】

ー大江戸学園:校舎敷地ー

そのオートレースは、校舎敷地のグラウンドに特設されたサーキットからはじまるらしい。

スタート後は町に飛びだし、近場を一回りしてから、またスタート地点へ戻ってくるという内容だ。なんというか、その大胆さには呆れを通り越して感心させられる。

手下A「おう。アンタたちも参加するかい?なら受け付けはあっちだぜ」

悠「ああ、どうもありがとう」

しかも招待状も何もいらない、このレースの存在を知っていれば誰でも参加できるという間口の広さ。賭場の常連にしか教えられないそうではあるが、それでも十分すぎる。この中に朱金もいるんだろうか?

スタートライン付近では、既に何人かのライダーがバイクにまたがって行ったり来たりしている。学園島はさほど広いわけではないし、路面電車やバスもあるため、バイク持ちの生徒は少ない。その分希少価値もあるんだろう、周囲はギャラリーでにぎわっていた。

吉音「銀シャリ号の方がカッコイイのに」

悠「まだいってるのか……」

コースの途中の方に散っている参加者も居るんだろう。人込みと呼べるほどには人数は居ない。なのに銀シャリ号の手綱を引いて歩く吉音には誰も注目しない。もともとバイクを身に来てる人が多いせいもあるんだろうけど、少しだけ気の毒になってしまうな。

悠「どうします?投票は始まってるようだし、もう処罰できそうなす感じですが」

想「そうですね。主催者である越後屋さんの所へ向かいましょうか」

といってもどこにいるのか……

朱金「おうお前ら、ちゃんと来たんだな」

悠「あか……金さんか。想像以上の規模だなこれは」

朱金「さすがは越後屋ってとこだな。学園の歴史の中でも最大規模だとか聞いたぜ。これが稼ぐためだってんだから恐れ入るよな」

想「その越後屋さんはどちらにいらっしゃるでしょう?」

朱金「南の手下は連れてきてるんだろうな」

想「もちろんです。校舎を囲むように配置してあるので、逃げようとすればすぐに情報が入りますよ」

朱金「よし。あいつなら教室の中にいるぜ。見つかる前にこっちから乗り込もう」

悠「了解」






ー教室ー

吉音「たのもぉーっ!」

手下B「来やがったか!」

手下C「旦那には指一本ふれさせねぇからな!」

吉音「わっわっ、ええっ?」

なんだこの待ち構えてたぜ!みたいな反応は。いやまさか本当に待ってたのか?扉を開いたとたん、教室の入り口を囲むように、チンピラたちが立ちはだかってきた。そしてその奥に。

越後屋「ようこそいらっしゃいましたなぁ。夜遅ぅにご苦労さんどす」

余裕たっぷりの越後屋、それに用心棒の佐東さんの姿があった。

朱金「どういうこった……てめぇオレたちが来るのがわかってやがったのか」

越後屋「それはまぁ、ここにいても人の出入りくらいは管理できるようにしとかんとなぁ。」

いわれてみれば、教室にはいくつものビデオモニターのようなものが並んでいる。

悠「監視されてたってことか…」

越後屋「賭場には監視カメラがつけられてることくらい、当然やおまへんか?」

返す言葉も無い。

想「ではなぜ私たちを取り押さえず、ここまで通すような真似をしたのです?」

越後屋「そんなん、殴り合いしたかて一文の得にもならへんからに決まってるやないの」

じゃあ得になるんだったらするのかよ。と突っ込みたくなるが。……するんだろうな、きっと。
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