ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【3】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

吉音「悠~、電話鳴ってるよ~」

悠「あー、了解」

相手は……朱金か。何かつかめたかな……。

朱金『オレだよ。オレオレ』

悠「もう流行らないぞ。……で、どうしたんだ?」

朱金『おう、なんか今夜でっかい賭場があるらしいぜ。オートレースだっていってた』

悠「あー?なんだって?今夜!?」

朱金『そうだっつってんだろ。んで主催者は越後屋らしい。例の金貸しどももくっついてるぜ。始めちまったら止められねぇ。取り締まるなら今夜がチャンスだ』

悠「ちょっと待てゐ!いやわかった。話の内容はわかったんだがなんで北町でやらないんだよ。せめて連絡するなら逢岡さんのところじゃないか?」

朱金『…………チッ』

電話の向こうから不機嫌な舌打ちが聞こえた。

悠「今舌打ちくれたか?」

朱金『オレは今外に出ててまともな指揮ができねぇんだよ。んでも逢岡のヤツに頼むのはなんつーかこう、気分が悪ィだろ?』

悠「だからおれに間をとりもてってわけか」

朱金『簡単にいや、そういうこった』

まったく、世話の焼ける……。これで町奉行なんだからな。

悠「それで場所と時間は?参加するのに何かいるのか?」

朱金『ああ、そいつはな……』






ー南奉行所ー

想「やれやれ、面倒な人ですね遠山さんは」

悠「はっきりとはいってなかったけど、潜入捜査をしてたんだと思いますよ。最近賭場に入り浸りだって話しも聞きましたしね」

想「小鳥遊君に伝えたのは、彼女なりの精一杯の譲歩という事ですか。オートレース……バイクを使うような派手なものであれば、確かに人もあつまりそうですね」

吉音「バイクなんかより銀シャリ号の方が速いよ!」

想「はは……本当は競馬もしたいのでしょうが、馬の飼育は大変ですからね。なかなか島へは持ち込めませんよ」

吉音「そうかなぁ……とってもいい子なのに」

想「銀シャリ号は特別ですよ。それこそ金額でいえば、バイクなんて足元にも及ばないでしょう」

吉音「ふぅん……」

まぁ徳河が使うような名馬だもんな。吉音には、高価だということはわかってもそれがどのくらいになるのかは想像もつかないんだろう。

想「いずれにせよ巨額の金銭が動きそうです。となれば大負けする方も多く出るでしょう。そこほ子飼いの金貸しに狙わせるという魂胆でしょうか」

悠「朱金がわざわざ連絡してきたほどだし、きっと博徒の中では、それなりに大きなイベントなんでしょう」

吉音「今度こそ、思いっきりあたしの出番かな!」

想「そうならない方が良いのですが……その時はお願いします」

吉音「よ~し、それじゃさっそくいこう!」

悠「はいはい、まだだからな。レースが始まるのは夜。それより先に行くと逃げられるだろ。」

想「ええ。現場を押えるのが最も効果的ですからね。それまではこちらも準備をしましょう」

吉音「う~~、それじゃあちょっと銀シャリ号温めてくる!」

悠「温めるって……レースに出るつもりなのか、あいつは」

想「まぁ何があるかはわかりませんからね。万全に整えておくに越したことはないでしょう」

悠「ですか……ね。」

想「あ、そうだ。小鳥遊君、折れた刀ですけど、直したものが届きましたのでお渡ししておきます」

悠「あー、すんません」

想「いえ、でもほとんど使われて無いみたいですね」

悠「はは……お飾りなもんでしてね。とりあえずありがとうございます」
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