ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【3】
ー越後屋本店ー
朱金「いけずっ……し、しかし」
越後屋「遠山様とウチの仲ですやんか。ちょっとくらいお目こぼししてくれてもええんとちゃいます?」
朱金「そういうわけにもいかないだろ。越後屋だけを特別扱いするのは、他からいろいろ」
越後屋「他は他、ウチはウチですやん。そんなもんなんとでもなりますって……んふふ」
越後屋がどんどん朱金に身体を摺り寄せていく。
朱金「ち、近いぞ。なんでそんなに……お、おいっ」
越後屋「見逃してくれたら、遠山様にだけ、いいことさせてもらいますのに」
朱金「いいことって、なんだよ」
越後屋「いいことってゆうたら、イイコトですやんか……んふん」
朱金「そ、そうか……イイコトか……へへへへ」
悠「おいおい朱金……」
越後屋に甘く鼻を鳴らされて、朱金の方は鼻の下がぐーんと伸びていく。せっかくカッコよく奉行らしくしていたのに、そんなあからさまな媚び方に捕まっててどうするんだよ。
越後屋「それとは別で、深い意味はありまへんのやけど……ご多忙な中こうして会いに来てくれただけでも、なんやお礼せんとあきませんやろ?」
朱金「まぁ、町奉行だからな。それなりに毎日、いそがしいぞ。うん」
朱金はされるがままになって、まったく抵抗しない。他に見ている人も、全然越後屋を止めようとしないし……。
悠「あの、もしもし」
はじめ「……なにか?」
悠「あーいやその、越後屋っていつもこんな感じなんですかね」
はじめ「ボクの仕事と関係ないことは知らない」
悠「そ、そうですか……」
こっちの人はこっちの人でマイペースだな。
越後屋「なあ遠山様、ウチら協力しあうべきやと思いまへん?ウチらが力を合わせたら、お互いもっと美味しいことにありつけるのは間違いない思いまへんか?」
朱金「おう、そえかもなぁ……へへっ、やっぱり、おんなじ学園の生徒なんだし、助け合っていかないとなぁ」
越後屋「さすがはお奉行様。ええこといわはりますわぁ」
越後屋は嬉しそうに身体を揺すり、朱金に擦りつけている。これ、絶対わかってやってるよな……。
朱金「おほ、おいおい、当たってるじゃねーか軟らかいのがふへへへ」
越後屋「あら、遠山様はお嫌いですか?」
朱金「いやぁ別にそんなことは。しかしこいつはけしからんなぁ」
もはやお堅い奉行スタイルはカケラもない。素の朱金がダダ漏れだ。
越後屋「これからもあんじょう、仲良うお願いしますえ、遠山様」
ちゃ……
朱金「おうおう、そういわれちゃ仕方がねぇってもんだな。やっぱ懐は広くねぇとなぁ」
悠「っておいおい!さすがにそれはマズイだろ!」
朱金「あ?なんだ悠、お前もおこぼれが欲しいのか、仕方ない奴め」
悠「ちゃうわい!アンタ朱金の袖に何入れようとしてるんだ?」
越後屋の手に握られた怪しげな紙包みが、朱金の服の袖に差し入られようとしている。いくらなんでもそれはあからさますぎるだろ。
越後屋「チッ、意外に目ざといんやな」
おれが指摘してようやく、越後屋は朱金から身体を離した。朱金は物寂しそうに、手を開いたり閉じたりしている……。
朱金「なんだよいきなり。なにそんなに怒ってんだ?」
悠「気づいてなかったのかよ。あんた今袖の中に賄賂突っ込まれそうになってたんだぞ」
朱金「は?マジで?……そうなのか?」
越後屋「そんなアホな。ウチかてさすがにそこまでしまへんわ」
朱金「ああ……おう、そ、そうだよな」
良かった。本当におれがついてきて良かった。あのままだったらシャレにならないことになっていた。だいたい普通なら、あんな態度と申し出だけで処罰には十分だと思うんだが。
越後屋「まぁとにかくだ、あんまりやりすぎないようにだけはしてくれ。規制を入れたりすると奉行所の評判まで悪くなるんだから、そこんとこは穏やかに行こうぜ」
越後屋「はっきりとお約束は出来まへんけど、気をつけるようにはいたしますわ」
朱金「よし、んじゃ言うことはいったし、失礼させてもらうぜ」
越後屋「またいつでもお越しください。おもてなしの準備は整えておきますんで」
朱金「そ、そうかへへへへ。んじゃいつにすっかな……」
悠「……朱金」
朱金「おう。いや、うん、ゴホン。次にこういう用件で来るときは、公式に申し入れるので、そのつもりで」
悠「それでは失礼いたします」
女子生徒B「あ、ありがとうございましたー」
ー表通りー
朱金「ふぃ。思ったより手間取ったが、まぁ多分釘は刺せたろ」
悠「頼むからもうちょっとしっかりしてくれよ。アンタ町奉行なんだろ?あんな見え見えの媚び方に引っかかってちゃ商人との交渉なんて無理だぞ」
朱金「そんときゃお前がやってくれりゃいい話しじゃんかよ」
悠「奉行が最初からそんな考えでどうするんだよ……」
朱金「なんだよ真留みたいなこというなよ。そっくりだぞ」
悠「ああ、おれも真留の気持ちがよくわかったよ。真留は凄いぞ。真面目で我慢強い良い子だぞ。大切にしてやれよ」
朱金「なんかいろいろ引っかかるが、そこんとこはいわれるまでも無いさ。でも越後屋、あの様子じゃあまたいろいろやらかしそうだな。こいつは金さんの出番がありそうな感じだぜ」
朱金「いけずっ……し、しかし」
越後屋「遠山様とウチの仲ですやんか。ちょっとくらいお目こぼししてくれてもええんとちゃいます?」
朱金「そういうわけにもいかないだろ。越後屋だけを特別扱いするのは、他からいろいろ」
越後屋「他は他、ウチはウチですやん。そんなもんなんとでもなりますって……んふふ」
越後屋がどんどん朱金に身体を摺り寄せていく。
朱金「ち、近いぞ。なんでそんなに……お、おいっ」
越後屋「見逃してくれたら、遠山様にだけ、いいことさせてもらいますのに」
朱金「いいことって、なんだよ」
越後屋「いいことってゆうたら、イイコトですやんか……んふん」
朱金「そ、そうか……イイコトか……へへへへ」
悠「おいおい朱金……」
越後屋に甘く鼻を鳴らされて、朱金の方は鼻の下がぐーんと伸びていく。せっかくカッコよく奉行らしくしていたのに、そんなあからさまな媚び方に捕まっててどうするんだよ。
越後屋「それとは別で、深い意味はありまへんのやけど……ご多忙な中こうして会いに来てくれただけでも、なんやお礼せんとあきませんやろ?」
朱金「まぁ、町奉行だからな。それなりに毎日、いそがしいぞ。うん」
朱金はされるがままになって、まったく抵抗しない。他に見ている人も、全然越後屋を止めようとしないし……。
悠「あの、もしもし」
はじめ「……なにか?」
悠「あーいやその、越後屋っていつもこんな感じなんですかね」
はじめ「ボクの仕事と関係ないことは知らない」
悠「そ、そうですか……」
こっちの人はこっちの人でマイペースだな。
越後屋「なあ遠山様、ウチら協力しあうべきやと思いまへん?ウチらが力を合わせたら、お互いもっと美味しいことにありつけるのは間違いない思いまへんか?」
朱金「おう、そえかもなぁ……へへっ、やっぱり、おんなじ学園の生徒なんだし、助け合っていかないとなぁ」
越後屋「さすがはお奉行様。ええこといわはりますわぁ」
越後屋は嬉しそうに身体を揺すり、朱金に擦りつけている。これ、絶対わかってやってるよな……。
朱金「おほ、おいおい、当たってるじゃねーか軟らかいのがふへへへ」
越後屋「あら、遠山様はお嫌いですか?」
朱金「いやぁ別にそんなことは。しかしこいつはけしからんなぁ」
もはやお堅い奉行スタイルはカケラもない。素の朱金がダダ漏れだ。
越後屋「これからもあんじょう、仲良うお願いしますえ、遠山様」
ちゃ……
朱金「おうおう、そういわれちゃ仕方がねぇってもんだな。やっぱ懐は広くねぇとなぁ」
悠「っておいおい!さすがにそれはマズイだろ!」
朱金「あ?なんだ悠、お前もおこぼれが欲しいのか、仕方ない奴め」
悠「ちゃうわい!アンタ朱金の袖に何入れようとしてるんだ?」
越後屋の手に握られた怪しげな紙包みが、朱金の服の袖に差し入られようとしている。いくらなんでもそれはあからさますぎるだろ。
越後屋「チッ、意外に目ざといんやな」
おれが指摘してようやく、越後屋は朱金から身体を離した。朱金は物寂しそうに、手を開いたり閉じたりしている……。
朱金「なんだよいきなり。なにそんなに怒ってんだ?」
悠「気づいてなかったのかよ。あんた今袖の中に賄賂突っ込まれそうになってたんだぞ」
朱金「は?マジで?……そうなのか?」
越後屋「そんなアホな。ウチかてさすがにそこまでしまへんわ」
朱金「ああ……おう、そ、そうだよな」
良かった。本当におれがついてきて良かった。あのままだったらシャレにならないことになっていた。だいたい普通なら、あんな態度と申し出だけで処罰には十分だと思うんだが。
越後屋「まぁとにかくだ、あんまりやりすぎないようにだけはしてくれ。規制を入れたりすると奉行所の評判まで悪くなるんだから、そこんとこは穏やかに行こうぜ」
越後屋「はっきりとお約束は出来まへんけど、気をつけるようにはいたしますわ」
朱金「よし、んじゃ言うことはいったし、失礼させてもらうぜ」
越後屋「またいつでもお越しください。おもてなしの準備は整えておきますんで」
朱金「そ、そうかへへへへ。んじゃいつにすっかな……」
悠「……朱金」
朱金「おう。いや、うん、ゴホン。次にこういう用件で来るときは、公式に申し入れるので、そのつもりで」
悠「それでは失礼いたします」
女子生徒B「あ、ありがとうございましたー」
ー表通りー
朱金「ふぃ。思ったより手間取ったが、まぁ多分釘は刺せたろ」
悠「頼むからもうちょっとしっかりしてくれよ。アンタ町奉行なんだろ?あんな見え見えの媚び方に引っかかってちゃ商人との交渉なんて無理だぞ」
朱金「そんときゃお前がやってくれりゃいい話しじゃんかよ」
悠「奉行が最初からそんな考えでどうするんだよ……」
朱金「なんだよ真留みたいなこというなよ。そっくりだぞ」
悠「ああ、おれも真留の気持ちがよくわかったよ。真留は凄いぞ。真面目で我慢強い良い子だぞ。大切にしてやれよ」
朱金「なんかいろいろ引っかかるが、そこんとこはいわれるまでも無いさ。でも越後屋、あの様子じゃあまたいろいろやらかしそうだな。こいつは金さんの出番がありそうな感じだぜ」