ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【3】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

朱金「つーわけだ、今から越後屋んとこへ行くぜ」

いきなり朱金がやってきて言い放ったのがそりだった。闇金融組合の裏にいた越後屋が、天狗党とも繋がりがあったことが濃厚になった。よってこれから調査に乗り込むのだ、という。

悠「それはいいが、なんで朱金が来るんだよ。逢岡さんから聞いたのか?」

朱金「フフン、オレたちを甘く見るなよ。そのくらいの情報は掴めるんだぜ。あいつらばっかりにデカイ顔されてたまるかよ」

悠「はぁ……でもおれでいいのか?調査なら真留あたりの方が役に立ちそうだけど」

朱金「そんな大層なもんじゃねぇよ。ちょっとツラ拝みに行くだけだ。町方連中ゾロゾロ連れていくと向こうも警戒するだろ?のんびりした顔のお前が適任なんだ。」

吉音「あたしはっ?」

朱金「あー……シンは悪いが留守番だ。今回はあんまり騒がしくしたくねーんだよ。ヤツをお縄にできる証拠がそろったら、その時にまた頼むぜ」

吉音「ええー、つまんない~」

吉音はむくれているが、そもそもおれがついていって何かできるのかも疑問だ。朱金もこれで頭に血が上りやすいし、そのストッパー役くらいには務めようと思うが。

悠「顔を見てくるだけって話だし、すぐに帰ってくるよ。ちょっとくらいはつまみ食いしていていいから」

吉音「えっ、ホントっ!なんだ~、そういうことなら悠ものんびりしてきていいからねっ」

悠「あー…」

吉音なら店ごと食いつくしかねないが、そこのところは良識に期待する。

朱金「よし、んじゃ行くぜ。っとその前に奉行所によらねーとな」

悠「了解。行ってくる」

吉音「は~い。いってらっしゃ~い」







大通りにある越後屋本店。文字通り学内有数の商会である、越後屋グループの総本山だ。

朱金「っとここだここだ。相変わらずでけーなぁ。執行部より金持ってんじゃねぇか?」

ちなみに朱金が奉行所に戻ったのは、服を着替えるためだった。今回は奉行として話しをしに行くつもりらしい。

悠「商才って奴なんでねの。」

朱金「まぁいいや、まっとうな商売をしてんならそれでいいんだよ。入るぜ」



ー越後屋本店ー

女子生徒B「いらっしゃいませ。どのようなものをお求めでしょうか?って、そのお召し物は……もしかしてお奉行様?」

朱金「ああ。北町奉行の遠山朱金だ。越後屋はいるか?」

女子生徒B「は、はい、いらっしゃいますが、その、どういった御用向きで……」

朱金「野暮用だ。聞きたいこと……というより言っておきたいことがあってな。いるなら呼んでくれ」

女子生徒B「ですがその、アポイントは」

朱金「町奉行への応対以上に優先されるのはどんなことだ?なに時間は取らせない。取り次いでくれ」

女子生徒B「ええと、そのぅ……」

悠「……約束を取り付けているわけじゃなったのか」

朱金「言っただろ、大事にしたくないと。これはあくまで個人的な訪問なんだよ」

悠「だったらおれの名前を使ってくれても良かったのに」

朱金「……なるほど、それは盲点だったな」

悠「おい……。」

「……そこで押し問答されると邪魔になる」

朱金「お?」

いつの間にかおれ達の傍らには、目隠しをした女の子が立っていた。

???「無理に通ろうというなら、ボクが相手になるよ」

ここにいるってことは、越後屋の用心棒ってことか。どこかで見たことあるような気もするけど。
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