ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【3】
ー廃寺ー
そして、秒に満たぬ一閃を防いだのもまた、瞬きの動きであった。
笠の少女「……防ぎますか、今の不意打ちを。しかも、片腕を止められたままで。」
吉音「あは……防がないと、痛そうだったし。」
笠少女の言葉を、まったくズレた視点で答えた吉音の手には、一撃を防いだ刀が握られていた。まだ鞘に半身が残ったままの刀は、それゆえに抜いた片手だけで刀身を固定でき、我が身を見事に守り通した。
笠の少女「なるほど、たいした技量をお持ちですね。しかし、不利なことは以前変わらずですよ。」
吉音の技量が優れているのは、今の動きだけで明白だった。
吉音「……」
笠の少女「片手で防げる範囲に限りはありますし、束縛を解こうとすれば隙が産まれます。」
だが、彼女の言もまた真実であり。その刃を止める理由が、笠少女には無いことは……ただの事実にすぎなかった。
吉音「逆から!?」
吉音の目には己に迫る一撃を見切っていたが、封じられた片腕が、その一撃への対処を拒んでいた。
マゴベエ『ピュイ!ピュイィィ!』
そんな彼女の窮地を、忠実なる臣下が救った。
剣速に劣らぬ鋭い急降下が、笠少女の攻撃を防衛に切り替えさせる。
吉音「マゴベエ!」
マゴベエ「ピュイ!」
笠の少女「剣魂とは厄介な……ですが、こちらも引くわけにはいきません」
一度引いた刀を左手に添え、大上段に振りかぶる。その構えには、特定の流派の型というほどの精密さはない。しかし隙のない佇まいは、我流で腕を磨き続けたことを如実に語っていた。
当然のことながら、構えられた刀に刃はない。だが剣魂ごと打ち倒す気概とそれを可能とする実力をこの少女が持ち合わせていることを、疑う余地はどこにもなかった。
吉音は刀を構えなおし、マゴベエが主人の盾となり立ちはだかる。そこへ笠少女が必殺の一撃を繰り出す。
『クカアァァー!』
笠の少女「なっ!」
吉音「はへ?カラ……ス?」
その寸前、突如現れた漆黒のかたまりが、失速し始めた刀の軌跡上に滑り込んだ。
笠の少女「くっ!」
笠の少女は、とっさに剣先を器用にながし、カラスと吉音を軌跡から外した。吉音らに斬りかかる理由があるように、そのカラスを切れない理由が彼女にはあるようだ。
カラス『カァ!カァッ!』
笠の少女「いったい何事ですか!邪魔をするならアナタでも許しませんよ!」
乱入してきたカラスをまるで問い詰めるかのような言葉を発したが、驚くべきことに返答があった。いや、正確には返筆とでもいうべきか。
カラス『このひとちがう!』
カラスは足に持ったスケッチブックとマジックを器用に使い、笠少女への返事を記した。
笠の少女「でも受け取った情報と合致しています!」
カラス『剣魂が違う!この人じゃない』
笠の少女「くっ…!」
吉音「え、え~と、おはなししてもいいのかな?」
笠少女から急速に敵意が消えたことを察した吉音は、楊枝を引き抜きながら尋ねた。だが、少女が手放したのは殺気だけではなかった。
笠の少女「……もう用はありません。迷惑をかけたことはお詫びします。それでは、これにて」
同時に興味も手放した彼女は、刀を収めカラスを肩に乗せると、吉音に背を向けて歩きだす。
笠の下に浮かぶ、すべてを断ち切るような表情は、常人では声をかけるにかけられる雰囲気を放っていた。
吉音「ううん、あたしの方が用あるの!悠のこと助けてくれたんだよね。ありがと!」
そして吉音は常人では無かった。いい意味でも悪い意味でも。
そして、秒に満たぬ一閃を防いだのもまた、瞬きの動きであった。
笠の少女「……防ぎますか、今の不意打ちを。しかも、片腕を止められたままで。」
吉音「あは……防がないと、痛そうだったし。」
笠少女の言葉を、まったくズレた視点で答えた吉音の手には、一撃を防いだ刀が握られていた。まだ鞘に半身が残ったままの刀は、それゆえに抜いた片手だけで刀身を固定でき、我が身を見事に守り通した。
笠の少女「なるほど、たいした技量をお持ちですね。しかし、不利なことは以前変わらずですよ。」
吉音の技量が優れているのは、今の動きだけで明白だった。
吉音「……」
笠の少女「片手で防げる範囲に限りはありますし、束縛を解こうとすれば隙が産まれます。」
だが、彼女の言もまた真実であり。その刃を止める理由が、笠少女には無いことは……ただの事実にすぎなかった。
吉音「逆から!?」
吉音の目には己に迫る一撃を見切っていたが、封じられた片腕が、その一撃への対処を拒んでいた。
マゴベエ『ピュイ!ピュイィィ!』
そんな彼女の窮地を、忠実なる臣下が救った。
剣速に劣らぬ鋭い急降下が、笠少女の攻撃を防衛に切り替えさせる。
吉音「マゴベエ!」
マゴベエ「ピュイ!」
笠の少女「剣魂とは厄介な……ですが、こちらも引くわけにはいきません」
一度引いた刀を左手に添え、大上段に振りかぶる。その構えには、特定の流派の型というほどの精密さはない。しかし隙のない佇まいは、我流で腕を磨き続けたことを如実に語っていた。
当然のことながら、構えられた刀に刃はない。だが剣魂ごと打ち倒す気概とそれを可能とする実力をこの少女が持ち合わせていることを、疑う余地はどこにもなかった。
吉音は刀を構えなおし、マゴベエが主人の盾となり立ちはだかる。そこへ笠少女が必殺の一撃を繰り出す。
『クカアァァー!』
笠の少女「なっ!」
吉音「はへ?カラ……ス?」
その寸前、突如現れた漆黒のかたまりが、失速し始めた刀の軌跡上に滑り込んだ。
笠の少女「くっ!」
笠の少女は、とっさに剣先を器用にながし、カラスと吉音を軌跡から外した。吉音らに斬りかかる理由があるように、そのカラスを切れない理由が彼女にはあるようだ。
カラス『カァ!カァッ!』
笠の少女「いったい何事ですか!邪魔をするならアナタでも許しませんよ!」
乱入してきたカラスをまるで問い詰めるかのような言葉を発したが、驚くべきことに返答があった。いや、正確には返筆とでもいうべきか。
カラス『このひとちがう!』
カラスは足に持ったスケッチブックとマジックを器用に使い、笠少女への返事を記した。
笠の少女「でも受け取った情報と合致しています!」
カラス『剣魂が違う!この人じゃない』
笠の少女「くっ…!」
吉音「え、え~と、おはなししてもいいのかな?」
笠少女から急速に敵意が消えたことを察した吉音は、楊枝を引き抜きながら尋ねた。だが、少女が手放したのは殺気だけではなかった。
笠の少女「……もう用はありません。迷惑をかけたことはお詫びします。それでは、これにて」
同時に興味も手放した彼女は、刀を収めカラスを肩に乗せると、吉音に背を向けて歩きだす。
笠の下に浮かぶ、すべてを断ち切るような表情は、常人では声をかけるにかけられる雰囲気を放っていた。
吉音「ううん、あたしの方が用あるの!悠のこと助けてくれたんだよね。ありがと!」
そして吉音は常人では無かった。いい意味でも悪い意味でも。