ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【3】
ー大江戸学園:日本橋ー
吉音「鬼ごっこの先輩からたまきちゃんにアドバイスしてあげる!」
たまき「うん!」
吉音「全力で走るときは、常に周りに目を配る。戦ではちょっとの油断が命取りになるんだから!」
たまき「う、うんわかった……」
悠「まてこら、そんな教えでいいのか」
吉音「ほえ?」
やっぱりだめだ、こいつ。
……っと、そんな会話をしているあいだにおれ達は、かなうさんの養成所にやってきた。
たまき「あれ、ここなんだ?」
悠「?」
吉音「なんだか賑やかー」
悠「そうだな。今日は忙しいのかな?かなうさん、いますかぁ?」
ーかなうの養成所ー
かなう「またんかーーーっ」
乙級女子A「きゃーーーっ」
乙級男子A「わーーーっ」
悠「あー?なんなんだ?」
かなう「こらぁーーっ、またんかーーっ!」
乙級生徒A「鬼さんこちらーーっ」
乙級女子A「手の鳴る方へーーっ」
かなう「よおーし、つかまえてやるぞーーっ、待てぇーーっ」
悠「……」
吉音「……」
かなう「っと、なんだお前たち、いつきていた」
悠「いや……いまさっき、ですけどね」
吉音「鬼ごっこしてたの?先生」
かなう「あ……ああその……」
口ごもるかなうさんは、柄にもなく照れているようだ。代わりに答えたのはたまきちゃんだった。
たまき「さっきまで、あたしも先生と鬼ごっこしてたんだよ」
かなう「う、うむ。最初は外で散歩としゃれこんでいたんだが、こいつらがどうしてもと……で、そのうちちょっと勢い余って……」
たまきちゃんの友達らしい乙級の生徒たちがこちらを興味津々に覗きこんでいる。
悠「ついには養成所の中でも……ですか?いったいどんな勢いがあれば……」
かなう「そ、そんなことよりどうした、なんでおんぶなんかされているのだお前は」
たまき「……新お姉ちゃんにぶっかっちゃったの」
吉音「それで怪我しちゃったから」
かなう「なに、そりゃいかんな。どれ、見てやろう。おい、みんな、鬼ごっこは中断だ。」
乙級女子A「えーーっ」
かなう「私は医者だからな、医者の本分を果たさねば」
乙級男子A「ちぇーっ」
吉音「じゃあ、あたしが混ざろうか」
乙級女子A「ほんと!」
吉音「混ざってもいい?」
乙級男子A「いいよ。でも、足が遅いとすぐに捕まっちゃうからな」
吉音「ふふーん、まーかせなさい!あ、でもここだとうるさいから外に出ようね。よーし、じゃーいっくぞー!」
乙級男子A「おーーっ!」
乙級女子A「おーーっ!」
悠「……ったく、完全に同レベルだな」
まあ、それも微笑ましくていいか。自然と浮かぶ笑みに、おれは肩をすくめた。
かなう「よし、少しジッとしてろよ。ヤクロウ頼む」
ヤクロウ『めぇー。めぇぇーー。』
小さなヤギから不思議な色の光が発して、たまきちゃんの膝を照らす。すると、すりむけて真っ赤になっていた肌がみるみるその色を変えていく。はらはらと傷ついた皮膚の断面がはがれ落ちると、そこにはもうまっさらな膝小僧に戻っていた。
かなう「うむ。たいした傷ではなかったし、これでもう痛くもなかろう。どうだ?」
たまき「うん、痛くない……不思議ぃ。先生、ありがとう!」
たまきちゃんに微笑むかなうさんの顔は心底うれしそうだ。彼女がどうしてこうして養成所を開いているのか、その気持ちがわかった気がした。
かなう「さあて。では行くぞ、たまき」
たまき「はい、先生」
悠「行くって、どこへ?」
かなう「きまっとるだろ。鬼ごっこの続きだ!それぇーーー!!」
たまき「それぇーー!」
悠「……」
取り残されたおれは呆然とふたりのでていった戸口を見つめるばかりだった。ふと視線を戻すと、そこにはヤギ……というかかなうさんの剣魂、ヤクロウが。
ヤクロウ『…………』
悠「…………」
なんとなく。ふたりの気持ちが通じ合った気がしたのは気のせいか。
吉音「鬼ごっこの先輩からたまきちゃんにアドバイスしてあげる!」
たまき「うん!」
吉音「全力で走るときは、常に周りに目を配る。戦ではちょっとの油断が命取りになるんだから!」
たまき「う、うんわかった……」
悠「まてこら、そんな教えでいいのか」
吉音「ほえ?」
やっぱりだめだ、こいつ。
……っと、そんな会話をしているあいだにおれ達は、かなうさんの養成所にやってきた。
たまき「あれ、ここなんだ?」
悠「?」
吉音「なんだか賑やかー」
悠「そうだな。今日は忙しいのかな?かなうさん、いますかぁ?」
ーかなうの養成所ー
かなう「またんかーーーっ」
乙級女子A「きゃーーーっ」
乙級男子A「わーーーっ」
悠「あー?なんなんだ?」
かなう「こらぁーーっ、またんかーーっ!」
乙級生徒A「鬼さんこちらーーっ」
乙級女子A「手の鳴る方へーーっ」
かなう「よおーし、つかまえてやるぞーーっ、待てぇーーっ」
悠「……」
吉音「……」
かなう「っと、なんだお前たち、いつきていた」
悠「いや……いまさっき、ですけどね」
吉音「鬼ごっこしてたの?先生」
かなう「あ……ああその……」
口ごもるかなうさんは、柄にもなく照れているようだ。代わりに答えたのはたまきちゃんだった。
たまき「さっきまで、あたしも先生と鬼ごっこしてたんだよ」
かなう「う、うむ。最初は外で散歩としゃれこんでいたんだが、こいつらがどうしてもと……で、そのうちちょっと勢い余って……」
たまきちゃんの友達らしい乙級の生徒たちがこちらを興味津々に覗きこんでいる。
悠「ついには養成所の中でも……ですか?いったいどんな勢いがあれば……」
かなう「そ、そんなことよりどうした、なんでおんぶなんかされているのだお前は」
たまき「……新お姉ちゃんにぶっかっちゃったの」
吉音「それで怪我しちゃったから」
かなう「なに、そりゃいかんな。どれ、見てやろう。おい、みんな、鬼ごっこは中断だ。」
乙級女子A「えーーっ」
かなう「私は医者だからな、医者の本分を果たさねば」
乙級男子A「ちぇーっ」
吉音「じゃあ、あたしが混ざろうか」
乙級女子A「ほんと!」
吉音「混ざってもいい?」
乙級男子A「いいよ。でも、足が遅いとすぐに捕まっちゃうからな」
吉音「ふふーん、まーかせなさい!あ、でもここだとうるさいから外に出ようね。よーし、じゃーいっくぞー!」
乙級男子A「おーーっ!」
乙級女子A「おーーっ!」
悠「……ったく、完全に同レベルだな」
まあ、それも微笑ましくていいか。自然と浮かぶ笑みに、おれは肩をすくめた。
かなう「よし、少しジッとしてろよ。ヤクロウ頼む」
ヤクロウ『めぇー。めぇぇーー。』
小さなヤギから不思議な色の光が発して、たまきちゃんの膝を照らす。すると、すりむけて真っ赤になっていた肌がみるみるその色を変えていく。はらはらと傷ついた皮膚の断面がはがれ落ちると、そこにはもうまっさらな膝小僧に戻っていた。
かなう「うむ。たいした傷ではなかったし、これでもう痛くもなかろう。どうだ?」
たまき「うん、痛くない……不思議ぃ。先生、ありがとう!」
たまきちゃんに微笑むかなうさんの顔は心底うれしそうだ。彼女がどうしてこうして養成所を開いているのか、その気持ちがわかった気がした。
かなう「さあて。では行くぞ、たまき」
たまき「はい、先生」
悠「行くって、どこへ?」
かなう「きまっとるだろ。鬼ごっこの続きだ!それぇーーー!!」
たまき「それぇーー!」
悠「……」
取り残されたおれは呆然とふたりのでていった戸口を見つめるばかりだった。ふと視線を戻すと、そこにはヤギ……というかかなうさんの剣魂、ヤクロウが。
ヤクロウ『…………』
悠「…………」
なんとなく。ふたりの気持ちが通じ合った気がしたのは気のせいか。