ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【3】

ー大江戸学園女性下着屋ー

由真「唯っ!」

だが、下着がおれの視界にさらされたのは一瞬の出来事で終わった。由真が慌てて奪い取って後ろに隠したのだ。

唯「いったーい、結花姉ぇ、由真姉ぇが殴ったー」

由真「アンタが悪いんでしょう。もうっ!」

結花「あらあら。でも、私も悩んでるの。小鳥遊君、どっちが似合うかしら。」

そういって結花さんがひらひらとした飾りのついたしたぎをおれに見せる。

悠「あー、えっと……」

右?いや、左?結花さんがつけるなら……えっーと……。

由真「見るな!変態!」

悠「痛っ!」

越後屋「小鳥遊さん、いったい何をしてはるんや?そうぞうしい……」

その時、中から越後屋が出てきやがった。タイミングは最悪だ。

由真「!?」

唯「うわっ、悠さんが女の子つれこんでるっ!」

結花「あら、可愛い下着。そっちのも素敵ねぇ。」

しかもよりによって下着姿のまま。

悠「お前!なんて恰好で!それと唯ちゃん!連れ込むとか人聞きの悪い言い方は良くないよ!」

由真「「お前」ぇ?ふーん、そういう感じなんだ。ふーん」

唯「うわー。悠さんてばスケベ大魔王だったんだー」

越後屋「小鳥遊さん、これ、どうや?」

まるで子住三姉妹を無視するかのように話を振ってくる越後屋。っか、なんでおれにみせるんだ。

悠「いちいちおれに見せなくてもいいだろ、ほら、はやく着換えろよ」

とにかくこの構図は良くない。
試着室に越後屋を押し戻そうとするが手を触れる訳にもいかず困惑していると余計なひと言を放言した。

越後屋「いややわぁ~。この下着、せつかく小鳥遊さんが選んでくれはったまに……」

悠「ぶっはっ!!」

唯「やっぱり!」

由真「この変態!」

結花「私もそれ探してこようかしら。」

悠「ちょっと待って!越後屋!適当なことを言うんじゃない!」

越後屋「ウチは嘘なんかついてませんえ」

こいつ、絶対に楽しんでやがる!くそうっ……。

悠「ぐっ…」

越後屋「ウチは小鳥遊さんのお好みで選んでもろただけですから、おほほほ……」

結花「小鳥遊くん、けっこういいセンスしてるのねぇ、私のも選んで貰おうかしら?」

由真「結花姉!唯!エロ男は放っておいていくよ!」

おれが悪いんじゃないのに、なんで此処まで怒られなきゃいけないんだ?なんだかやりきれない気分になってきたぞ。

悠「おい!ちょっと待て!由真、誤解だ、お前、誤解してるぞ!」

しかし由真は足を止めずいってしまう。

唯「じゃぁねー、悠さん、デート楽しんでねー」

悠「デートじゃない!市場調査!」

結花「今度私にもつき合ってねー」

悠「結花さん、誤解ですって!」

三人が行ってしまったあと、越後屋と二人取り残されてしまった。だいたいコイツが傷口を広げて楽しむような真似をするから……。

越後屋「にやにや……」

ダメだ。笑ってやがる。確信犯だ。

悠「越後屋……。お前のおかげでおれのご近所的信用はがた落ちだ。ありがとよ」

越後屋「おほほほ。おおきに」

悠「おおきにじゃねぇ!はあぁ……」

越後屋「ところで」

越後屋の口調が悪戯口調から急に商売人のそれに戻った。

悠「あー?」

越後屋「まだ感想きいてまへん」

悠「いいんじゃないか」

越後屋「おおきに、ほなこれ買いまひょ」

にこっと笑うと越後屋は次の下着を手にとって再び中に戻った。その後も越後屋の下着ショーにつき合い結局全部の下着を買って帰ることになった。





ー大江戸学園日本橋近くー

悠「あのさ」

越後屋「どしたん?」

悠「荷物持ちは要らないんじゃなかったのか?ハチロベイにパクっと……」

なぜかおれの腕には大量の紙袋。パッと見には分からないかもしれないが、知ってる人間が見れば女性下着専門店の紙袋と分かるだろう。

越後屋「雑貨や着物は気に花はならへんけど……下着は気分的にも画的にも良くあらへんやろ?」

悠「……」

いってることは半分理解できるが……。申し訳ないが下着以外の衣類もおれだったらごめんだと思った。
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