ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【3】

ー大江戸学園商店街ー

その後も立ち寄る店で次々に商品を手にとってはそれらをすべて購入し、剣魂の口に放りこんでいく。

越後屋「小鳥遊さん、何か腑に落ちんという顔をしてるみたいやな」

何軒目かをでた後、おれの表情を見て越後屋が声をかけてきた。

悠「あー……まーいまいち、おれは納得がいってないが……もしかしたらという部分もある」

越後屋「ほな聞かせて貰いましょか」

悠「納得がいかないのは買い物の仕方だ。」

越後屋「ほう」

悠「お前は欲しいから買うってさっき言ったよな」

越後屋「ええ」

悠「でも、こんな買い方はやっぱり変だろ。おれの勝手なイメージがあるかもしれないが商売人である越後屋がこんな浪費の仕方をするのはな……」

越後屋「浪費?」

悠「使うかどうかも分からない物に金に糸目を付けづに買いあさるなんて。今の店で買ったものだってそうだ、さっきの店で似たようなものを買ってただろ。言いたくは無いがただの無駄遣いなんじゃないのか?金を持ってるから使いたくなるのは病気だぞ。」

おれは思った事を正直に話した。だが、あまり感心しているようには見えない。

越後屋「はぁ~~~、小鳥遊さん」

越後屋は足を止めてこの日一番深いため息を吐いた。

悠「……」

越後屋「小鳥遊さんはほんまに商売に向いてへんなぁ~。もしかしたらいうんも一応聞かせてもらいましょか」

悠「もしかしたらの方は、越後屋が商人であるなら……もしかしたら市場調査なんじゃないかとも思ってる」

越後屋「あらま……」

悠「どんなものが売れ筋になってるのか、逆にどんな商品がだぶついてるのか、店ごとの値段の違い。一見同じ商品に見えても、作りや素材の変化を確認する事で作り手側の状況までみてる……当たったか?」

越後屋「やりますやないの小鳥遊さん、その通りや。もちろんうちの欲しいと思う物は買うてますし。うちにとって魅力のある商品はお客はんにとって魅力のある商品さかいにね。」

悠「さすがだな」

越後屋「ウチはちょっと見直しましたえ。なんや、それに小鳥遊さんよう見たらええ男やん」

ツンツンと胸元を指で突かれてゾクッと来た。越後屋の調子に乗せられそうになって、危うく忘れそうになったもう一つの疑問をぶつけた。

悠「っか、おれを連れてきた理由はなんだ?まさか面倒な店員を追い払うためだけに付き合わされたのか?」

確かに大量の買い物をするのに荷物持ちは必要かもしれない。だが、その役目は越後屋の剣魂ハチロベイがこなしている。おれが越後屋の後ろをくっ付いて回る必要は無い。

越後屋はわかってないといいたげに肩をすくめて首を横に振った。

越後屋「せっかちなお人やわ。……小鳥遊さんのお仕事はこれからやこれから」

歩きだした越後屋にくっついて向かった先はまたも衣類を扱う店。だが……。

悠「これは……」

越後屋「お店の前でそんなしはったら恥ずかしい思いをするで」

越後屋が事も無げに入って行ったのは女性用の下着専門店。右を向いても左を向いても下着だらけ。当然だが店内には店員も含めて男はおれひとりだ。

悠「ちょ……待て!越後屋!おれは外で待ってるぞ!」

無理だ。居心地が悪過ぎる。
店内の女性連中からもなにしにきたんだ?という視線が突き刺さる。

越後屋「小鳥遊さん、往生際が悪いんは男が下がるで」

越後屋の視線はもはやおれに否とは言わせぬ圧力に満ちていた。仕方なく小さくなってついていく。あぁ……周囲の視線が痛い。

越後屋「これなんかどう思う?」

悠「あー……どうってなにが?」

越後屋「こちらのとこちらの。小鳥遊さんの感想を聞かせて欲しいんや」

女性下着の感想を求められてもなぁ……。
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