ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【3】

ー近所の長屋ー

吉音「でもそれじゃあ、最初にどうして借りたかわかんないよ」

男子生徒A「うぐ……やっぱり答えなきゃダメですかね」

想「義務はありませんが、悪徳金融があるというなら調査しなければなりません。協力してくださるのならば助かります」

男子生徒A「はぁ、やっぱりそうですよね。」

訴えて来た男子生徒は、がっくりと肩を落とした。おれの経験上、借金で首が回らなくなるなんていうのは大抵くだらない事か、そうそうまともな理由はないと思って、ありがちなものを投げてみた。

悠「どうせ博打で負けたとかだろ」

男子生徒A「あっ……」

男子学生は大きく目を見開いておれを見た。どうやら正解だったらしい。

悠「どーした?」

男子生徒A「じ、実は……そ、そうなんです。そのとうりなんです。」

悠「やっぱりなぁ」

吉音「悠、すごーい!」

能天気に吉音に返事はしなかった。このくらいなら、ちょっと考えれば誰でも解る事なんだ。

男子生徒A「手持ちの金が足りなくなったんで、賭場から借金したんですが……その利子があまりにも高くて」

想「そもそもの賭博が違反行為ですからね。致しかたない事でしょう」

悠「っで、それを一気に返すために別の所から借りて、返しきれないままに膨れ上がった……と?」

男子生徒A「はい、そのとおりです……」

悠「あー……取り立てが乱暴なところ以外は、全部自業自得じゃないか。」

当初の主はさらに小さく萎んでしまった。しかしおれ達も、他人の不始末までは面倒見切れない。

男子生徒A「でも本当の所、もう俺には返すあてが無くて。このままだとまたこいつらが来ます……」

今足元で伸びている取立人も、吉音には手も足も出なかったが、こいつだとそうもいかないだろう。

悠「救いようのない話しだな……。どーします?」

想「しかたがありませんね。あなたの借金は奉行所で肩代わりします。そのかわり、金額分に相当するだけ、奉行所の役員として働いていただきます」

男子生徒A「ありがとうございますっ!それで済むならよろこんでっ!」

想「一番の下っ端になりますよ?それは激務です。覚悟しておいてくださいね」

男子生徒A「はい!はい!ありがとうございます!」

う~ん、逢岡さんのことだから、言葉ほどには恐ろしい事にはならないとおもうけど。解決法としては甘さと厳しさのバランスをとった妥当な所なのかも。

想「しかし賭博での借金ですか。これは他にも身を持ち崩す方が多く出そうですね。」

吉音「次はもっと強い人もいるかな」

悠「どうだろうな……賭博場や金貸したちは、用心棒くらい雇ってそうだけどな。寅とか風太郎、雷太郎なんてのが雇われてたら冗談じゃ済まなくなるし。」

あいつらは決して味方では無いし、寅も風雷コンビも雇われてうごいてる。場合によってはすぐにでも牙を剥いてくるだろう。

吉音「寅くんかぁー……。」

悠「やってみたいとか考えてるだろ」

吉音「えへへ」

そんなことないよ、くらいは言ってくれると思ったのに……。

悠「これだと狙うのは金貸しじゃ無くなりますね」

想「そうですね。これは金貸しのほうでは無く、賭場のほうを取り締まるべきなのかもしれません……」

賭博は学生たちの自己責任ということで黙認されている状態ではある。
ただそれも暴力事件なんかが多発するようになっては、取り締まざるをえない。ひとりが面倒事をおこすと、それが連鎖して思いもよらないところまで波及する。

これだけで終わるといんだが……。
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