ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【3】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

???「あ~ふむふむ、小鳥遊堂。ここやな」

はな「あ、はい、そうですよ。」

悠「らっしゃい。何にしましょう」

吉音「わっ、すご~い。もふもふできらきらだぁ」

悠「こら失礼だろ」

しかし、立場が違えば、おれも同じことを口走ったかもしれない。なんとまぁ派手な人なんだ。一応基本の制服の形は残っているけれど、装飾品がごてごてとものすごい。あれ、頭は重くないのかな……。

???「ごめんやけど、お茶のみに来たんやないんよ。ちょっと挨拶をしとこ思ってなぁ」

悠「はぁ……どちらさまで?」

越後屋「あんたはんが小鳥遊悠。そちらはんが徳田新さんと夏目はなさんですな。天狗党事件のときはえらいご活躍やったそうで。ウチは越後屋山吹(えちごややまぶき)いいます。以後よろしゅうお見知りおきを」

悠「はぁ……越後屋さん」

越後屋「どや、あんさんらウチと手ぇ組まへんか?このちっぽけでボロい茶屋も、学園一番の大店にしたるで?」

悠「あー?なんだあんた……商人か?他人の店をいきなりボロいとかはないだろ。こうみえてドボルベルグの素材を贅沢にあしらってるってホラ吹いてるんだぞ。」

はな「嘘じゃ無いですか。しかも、茶屋が根性とか不屈のスキル発動してたら嫌ですよ」

悠「あと、ボロいの事実だな」

吉音「そうだよ。悠の作るお菓子はおいしいよ!」

最近はそれなりに茶菓子の味も上がってきた。まぁ毎日作ってたらよっぽどのバカじゃなかったら嫌でもスキルアップする。

越後屋「いくら美味しゅうても、売れへんかったらなんの意味もおまへん。その味もっと大勢の人に知ってもらいたいとは思いまへんのんか?」

吉音「知ってほしい!思う思う!」

悠「たっ!こらこら」

はな「手のひら返すの早すぎです」

悠「っか、まぁ……アンタのいうこともわからなくはないが、いきなりそんな態度で来られて良い気分になるわけないだろ」

越後屋「ほんまのことやて、自分でも認めてたやないの。それにちょっと腹立てたからいうて、大きなもうけ話を棒に振るんか?」

悠「おれはこの学園に来て日が浅いし、わからない事が多い。それに別に手を広げる気はないんだよ。気にいった常連さんもいるし、しばらくは今の規模で続けようと思ってる。申し訳ないけど、その話しを受ける訳にはいかないな。勝手な事したら拳二がうるさいし」

越後屋「あぁその頑固さ、もったいないなぁ。そのうちあんさんにもわかるようになるやるけど、学園、いや日本は実質徳河に支配されとる。うちはなんとかそれに対抗したいんや。力を貸してくれる同士をさがしとる。気が変わったらいつでもええで、待っとるで。ほなな」

こちらに脈無しと見たか、越後屋は一方的にまくしたてるとスタスタいってしまった。
来る時が唐突なら、帰っていくのも唐突だ。

吉音「……なんだったんだろ、あれ」

はな「……なんだったんでしょうねです」

悠「さぁ……おれにも分からん。」

何か凄い野望をもった人らしいってのは伝わってきたけれど……第一印象が悪すぎる。あんまり世話にはなりたくない感じの人だったなぁ……。





想「越後屋といえば、学園内でも有数の大商人ですね。個人では松永と並ぶくらい最大の勢力を誇っているのではないでしょうか。ただ、いろいろと黒い噂もありますが……」

やってきた逢岡さんに話してみると、そんな答えが返ってきた。あの越後屋、学園内ではかなり有名人らしい。あと、松永からの刺客は最近来て無いな。

はな「黒い噂?」

想「天狗党事件は一応解決しています。しかしいくつか謎になったままの所がありまして……そのひとつが資金源です。毅俊がいくら徳河家の者だとはいえ、あれだけの人数を揃えたり、爆弾を仕掛けようとしたり……天狗党の規模は、とてもひとりでまかなえるようなものではありません」

悠「その援助についてたのが、越後屋だってことか?」

想「それだけの力があること。稼ぐためなら強引な手口も厭わないこと。それらから類推されているだけです。確信できるような証拠は、まだ何もありませんけどね。」

うむむ、さっき話した女はずいぶんと手ごわい相手だったらしい。活躍して目立ってしまうのも善し悪しだな……。
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