ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【3】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

吉音「ごそさまっ!」

悠「ごちそうさまのつもりか、それは?まったく……はいはい、お粗末さまでした。」

吉音「さぁーてと、お団子で小腹も埋まったことだし」

悠「……ほっほぅ。小腹ねぇ」

吉音のわきに積み上げられた皿は見事な高さを誇り、両手の数では到底足りそうになかった。

吉音「小腹も埋まったことだしっ!」

気持ちいいほど言いきられてしまった。ここまでスッパリ言われたら、いっそ清々しい。

悠「あー……お前にとってはそうかもな。小腹で店が傾かないことを祈ってるよ」

吉音「あっはは、お皿の重みじゃお店は傾いたりしないってばぁー」

悠「そういう意味じゃないんだが……」

いや、吉音なら、そっちの意味でも不可能じゃない気がして来たぞ。おそるべし健啖少女。

吉音「ということで、ちょーっと出かけてこようかな」

悠「あー?なんか用事か?」

吉音「見回りっ!」

なぜか太陽に向けて指をさし、妙に素敵な笑顔でこっちに振り返る。そこまで決める事なのか、甚だ疑問だ。

悠「見回りも結構だが、一応ウチの用心棒なんだぞ。今日ははなちゃんも休みだし気軽に店を離れてる間に、もめごとがあったらどうすんだ。」

吉音「ふむ、もめごと……」

悠「……」

吉音「……もめごと、ね」

悠「どうせ閑古鳥だよ無人の野だよもめ事が起こる余地すらないさ!!」

閑静にもほどがある店内には、当然のようにおれたちしか居なかった。

吉音「じゃあ、見回りいってくるね!」

悠「えぇい、ちくしょう、いくらでも行って来い!」

吉音「とーう」

悠「まったく……さっさと行きやがって。もう見えなくなったぞ」

チンピラA「こっちはすっかり待ちくたびれたけどなぁ」

悠「あー?」

チンピラA「この前の礼をしにきたぜ。おっと、遠慮は無しだからな?おれとあんたの仲じゃねーか」

悠「……ごめん。なんの話しだっけ?」

チンピラA「忘れたのかよ!」

悠「そもそも、お前誰だよ?」

チンピラA「そこからかよっ!」

悠「っか、人類か?」

チンピラA「種族否定かよ!!」

チンピラB「……いつまで遊んでんだよ、ったく」

チンピラC「こいつが忘れてても、とぼけてるだけでも、どっちでもいーんじゃね?やるこたぁいっしょだし」

悠「あー……こりゃこりゃ、団体さんのご到着だな。だけど、あいにくご予約はいただいておりませんが?」

チンピラB「なら、臨時で貸し切りにしてもらおう。団体名は、借金取り御一行様だ」

悠「……あー、思い出した。目安箱置いてから、いくつかあった依頼の中で成敗した人たちか。」

チンピラA「ああん?」

詐欺にかけて借金を背負わせるという典型的な、小悪党だった。自分たちが悪い癖にお礼参りとは笑わせてくれる。……とはいえ、奴らの後ろにも更にまた何人もいるな。吉音がいない上に、この人数差か……

チンピラC「おっと、逃げ道があると思うなよ。裏口はすでに押えてあるし、頼みのお嬢ちゃんも出ていったばかりだ。」

悠「お前ら、新が出かけるのを待ってたのか?!」

こいつら、見た目より頭を使ってるな。とんでもなくレベルが低くて暇人であるとも思うけど。

チンピラA「お礼参りは、確実にやらねぇーとな!」

悠「店の物に手をだすな!」

チンピラB「ならねお前に手を出してやるぜ!」

悠「おっと。」
ひょいっ…

チンピラA「喰らえコラァ!」

悠「とぉ~」
ひょいっ…

チンピラA「ちょこまかすんじゃねぇ!!」

悠「お前らがトロいんだろ」

適当に攻撃を避けながら、店の外に飛び出た。
だが、状況そのものはなんの変化も無かった。
44/100ページ
スキ