ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【3】
ー大江戸学園:商店街ー
悠「ふぁ……あーあ、今日も大江戸はニホン晴れってね……」
特に行くあてもなくブラブラと歩きながら、おれは天を仰いで背伸びした。目安箱をに投書された問題は、いくつか解決したものの、まだまだこの学園には知らないことが多すぎる。そこでもっと、自分の足で歩いて見て回っておこうという訳だ。
???「ねぇねぇ、ちょっと、そこのアナタ!」
女子生徒A「な、なんなの?いきなり……」
悠「ん?」
???「うっふふふ……地味ですわねぇ、アナタ」
女子生徒A「は?」
角を曲がり、日本橋に差し掛かったところで、なにやら聞き覚えのある声がした。
悠「あー?あれは確か……」
名前は知らないが前、道に迷った時にちょこっとだけ話した女の子だ。その女の子に呼びとめられた女子生徒は、あからさまに戸惑いの表情を浮かべている。その気持ちを代弁するなら「うわっ、面倒なのに捕まった」って所だろうか。しかし当の女の子はそんな空気を気にする様子もなく、愉快そうに微笑んでいる。
カートを引いた少女「その服装、頭のてっぺんからつま先まで、地味で地味でつまらないって、言いたいんですの」
女子生徒A「はぁ?な、なにいってるの?」
カートを引いた少女「ねぇ、ダイちゃんも、そう思いませんこと?」
そういって女の子は、持っているカバンのうえに乗っている、奇妙な人形に話しかける。
う~~ん、これはいわゆる……不思議ちゃんてやつか?
女子生徒A「あ、あのねぇ、地味って……これは制服なんだから仕方ないでしょ?」
女子生徒の反論に、思わずうなずいてしまう。
くわえていうなら、大江戸学園の制服は、どちらかといえば可愛い部類に入ると思うんだが……。
カートを引いた少女「あ~~~ら、それは甘えじゃありませんこと?」
女子生徒A「あ、甘え?」
カートを引いた少女「たとえ制服といえど、地味で可愛くないなら改造すべき、ですわ!」
悠「めちゃくちゃいってるなぁ……」
まぁ、おれも人の事はいえんけど……あきれて見てると、女の子はくるっと一回転ターンした。
カートを引いた少女「この日本橋界隈を歩くなら、せめてわたくしのような個性溢れるファッションでないと……!!ねぇ、ダイちゃん」
悠「う、う~~ん……」
そういう女の子のファッションは、個性に溢れすぎて、ド派手の域まで達している。
アレを着こなすには、相当なセンスと覚悟が必要だろうな……色々と。
女子生徒A「ご、ご忠告ありがとう。じゃ私、急ぐからこれでっ!」
カートを引いた少女「あっ、ちょ、ちょっと……」
一瞬の隙をついて、女子生徒は脱兎のごとく逃げ出してしまった。
悠「まぁ、無理もないよな……って、あの女の子、今度はこっちに向かってきているような……?」
カートを引いた少女「は~~い、そこのあなた!」
悠「あー……やっぱりかぁ……」
逃げようにもおれはいつの間にか壁を背にして追い詰められていた。こ、この女の子……意外と……できる……のか?
カートを引いた少女「あなたもダメねぇ、着こなしからして全然なっていませんわ……第一、色気が無いもの」
悠「ほっといてください。っか、だいたいアンタ誰なんだ?」
夜「ん?わたくし「拝神夜(オガミナイト)」と申しますの。以後、お見知りおきを」
うやうやしく一礼したかと思うと、夜はいきなりおれの襟元に手をかけて来た。
悠「おい、な、なにをっ……」
夜「ほらほら……胸元はもっとこう、ガバっと広げて……」
悠「いや、これ、胸元っていうか……肩まで出てるんだが……」
夜「前髪も片側に寄せて、まとめた方がいいですわね。ちょっとじっとして」
悠「前髪はあんまりいじらないで……」
輪ゴムでおれの前髪をくるくるとまとめると、夜はいったんおれから離れた。
夜「んっ、そうそう、そうね、だいぶよくなってきましたわ。ねぇ、ダイちゃん!」
悠「そ、そうかぁ?」
鏡のたぐいがないからよくわからないが、今のおれってバカ殿みたいになってるような……。
夜「あとはもっと脚をぐっと開いて、腰をこう、ひねって……そうして刀の柄に手をかけて……そうそう、ナイスですわぁ……はい、バシャコン♪」
悠「なっ!?」
夜「うっふふ、ベストショット、いただきましたわ」
いつのまにか手にしていた小型カメラをひらひらと振りながら、夜はおれから離れていく。
悠「ちょ、ちょっと待てよ、アンタ!」
夜「それじゃあ、まったね~~」
なんだか満足したらしく、夜はスキップしそうな足取りで、いってしまった。な、なんだったんだあれは……。
男子生徒C「いやいや、災難だったね、アンタ……ありゃ「大神伊都(おおがみいと)」っつてこの界隈じゃ有名な変人だよ」
悠「おおがみ?だってさっきは拝神って」
男子生徒C「そりゃ偽名だよ。なぜか本名を嫌って、そんなふうに名乗ってるのさ」
悠「偽名……」
男子生徒C「ああ見えて、昔は名家のお嬢様だったらしいんだけどねぇ……あんまりおかしな事ばっかりするもんだか、見放されちまったってもっぱらの噂だよ」
悠「へ、へぇ……」
まぁ、とにかく色んなやつがいるもんだな……。そんな事を思いながら、おれは大神が立ち去った方向を、しばらくぼんやりと眺めていた。
悠「ふぁ……あーあ、今日も大江戸はニホン晴れってね……」
特に行くあてもなくブラブラと歩きながら、おれは天を仰いで背伸びした。目安箱をに投書された問題は、いくつか解決したものの、まだまだこの学園には知らないことが多すぎる。そこでもっと、自分の足で歩いて見て回っておこうという訳だ。
???「ねぇねぇ、ちょっと、そこのアナタ!」
女子生徒A「な、なんなの?いきなり……」
悠「ん?」
???「うっふふふ……地味ですわねぇ、アナタ」
女子生徒A「は?」
角を曲がり、日本橋に差し掛かったところで、なにやら聞き覚えのある声がした。
悠「あー?あれは確か……」
名前は知らないが前、道に迷った時にちょこっとだけ話した女の子だ。その女の子に呼びとめられた女子生徒は、あからさまに戸惑いの表情を浮かべている。その気持ちを代弁するなら「うわっ、面倒なのに捕まった」って所だろうか。しかし当の女の子はそんな空気を気にする様子もなく、愉快そうに微笑んでいる。
カートを引いた少女「その服装、頭のてっぺんからつま先まで、地味で地味でつまらないって、言いたいんですの」
女子生徒A「はぁ?な、なにいってるの?」
カートを引いた少女「ねぇ、ダイちゃんも、そう思いませんこと?」
そういって女の子は、持っているカバンのうえに乗っている、奇妙な人形に話しかける。
う~~ん、これはいわゆる……不思議ちゃんてやつか?
女子生徒A「あ、あのねぇ、地味って……これは制服なんだから仕方ないでしょ?」
女子生徒の反論に、思わずうなずいてしまう。
くわえていうなら、大江戸学園の制服は、どちらかといえば可愛い部類に入ると思うんだが……。
カートを引いた少女「あ~~~ら、それは甘えじゃありませんこと?」
女子生徒A「あ、甘え?」
カートを引いた少女「たとえ制服といえど、地味で可愛くないなら改造すべき、ですわ!」
悠「めちゃくちゃいってるなぁ……」
まぁ、おれも人の事はいえんけど……あきれて見てると、女の子はくるっと一回転ターンした。
カートを引いた少女「この日本橋界隈を歩くなら、せめてわたくしのような個性溢れるファッションでないと……!!ねぇ、ダイちゃん」
悠「う、う~~ん……」
そういう女の子のファッションは、個性に溢れすぎて、ド派手の域まで達している。
アレを着こなすには、相当なセンスと覚悟が必要だろうな……色々と。
女子生徒A「ご、ご忠告ありがとう。じゃ私、急ぐからこれでっ!」
カートを引いた少女「あっ、ちょ、ちょっと……」
一瞬の隙をついて、女子生徒は脱兎のごとく逃げ出してしまった。
悠「まぁ、無理もないよな……って、あの女の子、今度はこっちに向かってきているような……?」
カートを引いた少女「は~~い、そこのあなた!」
悠「あー……やっぱりかぁ……」
逃げようにもおれはいつの間にか壁を背にして追い詰められていた。こ、この女の子……意外と……できる……のか?
カートを引いた少女「あなたもダメねぇ、着こなしからして全然なっていませんわ……第一、色気が無いもの」
悠「ほっといてください。っか、だいたいアンタ誰なんだ?」
夜「ん?わたくし「拝神夜(オガミナイト)」と申しますの。以後、お見知りおきを」
うやうやしく一礼したかと思うと、夜はいきなりおれの襟元に手をかけて来た。
悠「おい、な、なにをっ……」
夜「ほらほら……胸元はもっとこう、ガバっと広げて……」
悠「いや、これ、胸元っていうか……肩まで出てるんだが……」
夜「前髪も片側に寄せて、まとめた方がいいですわね。ちょっとじっとして」
悠「前髪はあんまりいじらないで……」
輪ゴムでおれの前髪をくるくるとまとめると、夜はいったんおれから離れた。
夜「んっ、そうそう、そうね、だいぶよくなってきましたわ。ねぇ、ダイちゃん!」
悠「そ、そうかぁ?」
鏡のたぐいがないからよくわからないが、今のおれってバカ殿みたいになってるような……。
夜「あとはもっと脚をぐっと開いて、腰をこう、ひねって……そうして刀の柄に手をかけて……そうそう、ナイスですわぁ……はい、バシャコン♪」
悠「なっ!?」
夜「うっふふ、ベストショット、いただきましたわ」
いつのまにか手にしていた小型カメラをひらひらと振りながら、夜はおれから離れていく。
悠「ちょ、ちょっと待てよ、アンタ!」
夜「それじゃあ、まったね~~」
なんだか満足したらしく、夜はスキップしそうな足取りで、いってしまった。な、なんだったんだあれは……。
男子生徒C「いやいや、災難だったね、アンタ……ありゃ「大神伊都(おおがみいと)」っつてこの界隈じゃ有名な変人だよ」
悠「おおがみ?だってさっきは拝神って」
男子生徒C「そりゃ偽名だよ。なぜか本名を嫌って、そんなふうに名乗ってるのさ」
悠「偽名……」
男子生徒C「ああ見えて、昔は名家のお嬢様だったらしいんだけどねぇ……あんまりおかしな事ばっかりするもんだか、見放されちまったってもっぱらの噂だよ」
悠「へ、へぇ……」
まぁ、とにかく色んなやつがいるもんだな……。そんな事を思いながら、おれは大神が立ち去った方向を、しばらくぼんやりと眺めていた。