ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【3】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

吉音「お……おっ、おっとっとっ、おぉおお」

悠「あー……」

はな「あ……あぶっ、あぶあぶあぶ、あぶなっ」

吉音「ああああっ!!」

がしゃん!!

悠「またか……」

真っ二つになった湯飲みからこぼれたお茶が、地面へと吸い込まれていく。運ぶ途中で落っことして割るって、これで一体いくつ目だろうか。

光姫「これはまた見事。まるで漫画でも見ているようじゃな。ほほほ」

悠「すいません光姫さん」

はな「大丈夫ですか?かかったりしていませんかです?」

光姫「わしはなんともないよ。それより、新さんの方を気にかけてやるべきではないかの?」

悠「あー……そうっすね。」

吉音はまた、湯飲みを割ってしまったことに、消沈し、小さくしぼんで附いていた。

悠「ふー、新、誰も怪我とかなかったし、まぁそんなに落ち込むなよ。」

吉音「……あたし、悠のお手伝いしようと思ったの」

悠「そりゃ嬉しいけど、苦手なことをわざわざしてくれなくてもいいんだぞ?新には用心棒として十分に活躍してもらってるんだからさ」

吉音「でも、いつも仕事がある訳じゃないし」

そりゃ終始狼藉者に襲われてちゃこっちも困るけどな……。

悠「まぁ、とりあえず、ホウキとチリトリ持ってきてくれ。いつまでも転がしておくわけにもいかないし。」

吉音「はぁーい……」

由佳里「あっ、わたしもお手伝いしますよ」

うっ……これまた心配なのが加わるなぁ……
でも、さすがに掃除くらいならこの二人でもできるだろうし。好意を無にするのも悪いし。
その間にお茶を出さないとな……。
ん?あれ……マズイ、湯飲みが無くなりそうだ。ほとんど最初から有ったものだけだったし。お客さんの数が少なくて眠っていた湯飲みも多かったけど、みんな日の目を見られてよかったな……。いや、日の目を見た子から昇天してしまっているので、笑い話にもならないけど。

光姫「どうした悠、そっちでもなにかあったか?」

悠「あ、いえ、すぐにお持ちします。」

光姫さんたちが帰ったらすぐに買い足しにいかないとな。







ー大江戸学園:商店街ー

というわけで、お店は吉音とはなちゃんに預けて買いだしに出てきていた。
はなちゃんが居るから吉音だけよりは何倍も安心できるが、いくらか食べ物が減ってることは覚悟しとかなきゃならないだろう。
さて……和食器屋さんはと……こんな時におれも剣魂があればなぁ。


「おや……また会ったな。」

悠「あー?っと……長谷川さん!それに徳河さんもっ!!こ、こんにちは」

詠美「こんにちは、ご丁寧にどうも。」

悠「あ、おれは小鳥遊悠といって、茶屋の店主してます。長谷川さんには、以前失礼な真似を……」

平良「いやいや、率直な言葉が聞けて嬉しかったよ。これからも忌憚のない意見を頼むぞ。」

長谷河さんと徳河さんが肩をならべて歩いている。長谷河さんは前にもあった事があるけど、徳川さんを街中で見かけるのは初めてだ。周りの人はちょっと避けて通るような感じだけど、そこはしかたが無いのか。ふたりとも特に気にした様子は無い。

悠「はぁ、おれなんかで良かったら。それより、お二人がそろって、町の見回りですか?」

平良「いいや、今日は二人とも非番だからな。デートだよ、デート。」

悠「えっ?」

デートってそういうことなのか?確かにお嬢様っぽい徳河さんと、貫禄のある長谷河さんだったら、お似合い……な様な気もするけど。

詠美「長谷河さん、誤解を招くような言い方をしないで」

平良「いいじゃないか。似たようなものだろ」

詠美「もう、誰にでもそういうことを言うのだから。」

平良「詠美は出不精だからな。たまにこうして連れ出してやらないとカビが生えてしまう。」

悠「はは、仲がいいんですね。」

長谷河さんは、徳河さんとこんな風に話せるのか。とういか、同級生(いや、後輩か?)なんだから、本来はおれもこんな風にしていいはずなんだけど、なにか気が引けてしまう。
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