ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【3】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

悠「うん」

吉音「あれ~どうかしたの?」

おれが目安箱を見ていると、吉音ものぞきこんでくる。

悠「いや、なんだかんだで投書も増えてきたし、定着してるのかなって」

吉音「確かに、けっこう色んな事件解決してきたもんね」

想「そうですね。」

寅「喧嘩も売られてきてるがな」

はな「そうですね~」

寅や逢岡さんも含めていつものメンツだ。

吉音「あはは、奉行所のお仕事取っちゃってごめんね。」

想「直々に奉行所に訴え出るのが気が引ける者も、気軽に届け出ていますから。上手く棲み分けられてると思いますよ」

はな「滑り出しは上々ってことですね。」

悠「このまま上手く回ってくれれば……」

寅「秋葉原、池袋のトラブルシューターに新宿も加わるか……」

吉音「とらぶる?」

悠「いや、何でも無っ……」

輝「こらーーーーー!!」

悠「うわっ?!な、なんだ?」

吉音「あれ、てる?」

そう、飛び込んできたのは輝だった。

輝「悠ちゃん!ズルイ!!」

悠「あー?」

輝「それだよそれ!それがズルイ!」

輝が指さしてるのは目安箱だ。

悠「なにがぁ?」

輝「こっちは必死に網張って駆けずり回って情報集めてるっていうのに、そっちは待ってるだけで勝手に集まってくるじゃないさ!それにさ奉行所ともよろしくやっちゃってさ!ズルイったらありゃしないよまったくもぅ!」

想「はぁ……なんてタイミングの悪い人……」

想はほとほと困り顔で目を伏せる。

輝「ずーるーいー」

悠「ズルイっていわれてもなぁ」

寅「悠がずる賢いのはデフォルトだしな」

悠「黙らっしゃいよ」

吉音「じゃあさ、てるも募集したらいいんじゃないかな。情報。別に規制されてないんだしさ」

輝「そんなのとっくにやってるさ!でも全然なんだよ~。こっちは謝礼まで出してるってのに」

寅「そこまでやってんのか……」

輝「こっちはお金出してるのに、そっちは何もしてないなんてズルイじゃないさ!!」

はな「そういうですけど、こっちは事件を解決するのが目的ですよ?」

輝「そうだよ!それに感謝までされちゃってさ!不公平だよ!それにさー、こっちに来る情報なんてぜーんぶ終わった後の事なんだよね。目安箱なんかで解決した後でさ」

その言葉におれ達は苦笑いするしかない。

悠「しかしだなぁ……」

輝「この輝さんが欲しいのは、今!今起きてるホットな情報なのよ!生きた、それもとびっきり衝撃的な情報さ!」

寅「あのチビ、話し聞いてねぇな……」

輝「そんなわけでその箱おくれよ。」

吉音「そ、それはダメだよ!」

輝「えー、いーじゃんいーじゃん!」

寅「どつくか?」

はな「止めたげてくださいです」

悠「あのさ、輝は誰かにいわれて取材に行くってのでいいのか?」

輝「ほえ?なんだい、藪から棒に」

悠「いいえ、壁から釘です」

はな「それ言わなくていいですから」

悠「だからさ、目安箱に事件が書いてあって、そのとおりに取材するかって事だよ。」

輝「まぁ、面白そうなら」

悠「それが、例えば誰かが釣ろうとしてきた嘘でも?いや、嘘じゃなくても瓦版を広告代わりにしようとしてもか?」

輝「それは……まぁ嫌だけど。」

悠「やっぱりさ、取材っていうのは自分で探しに行ってこそなんじゃないか?少なくとも……輝の瓦版を買ってる人はそういう人達だと思うぞ。」

輝「自分で探しにいってこそ、か……確かにそうかも」

悠「分かってくれたか」

吉音「さすが、悠いい事いうね。」

寅「口先三寸」

はな「口八丁手八丁」

輝「おうさ!つまり、人は情報ってのは隠したがるモンだからね!そこを暴くのがジャーナリズムさ!」

想「ぼふっ……」

思わず飲みかけのお茶を吹きだしそうになる逢岡さん。

悠「あれ?」

輝「そうか。うんうん……へへ、大事なことを気づかせてもらっちゃったね。さんきゅー、悠ちゃん!そうだよ、そうだよ。周りに頼ってちゃ、いい記事なんか書けないしね、うんうん。それじゃー!」

悠「行っちまった……」

寅「お前の口八丁手八丁も厄介なのに火をつけるのの一役買ってるのかもな」

悠「止めてくれ……」
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