ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【3】

ー大江戸学園:蕎麦屋ー

悠「ズルル……ん、うまい。」

由佳里「ほんとう!出汁の味がしっかり出ていて、それなのにさっぱりしててくどくない」

光姫「蕎麦もコシがあっていい塩梅じゃ。店主や、これは手うちかの?」

蕎麦屋店主「え……は、はあ、私が毎日打っております」

光姫「どおりで味がしっかりしておるわけじゃ……これほどの蕎麦、久しく食うておらんの」

由佳里「コシに香り、歯触りにのどごし……どれも学園内では食べた事無い味です。」

悠「こんな美味い蕎麦屋があったなんてな……しかし、光姫さんもすごいな。外観を見てここが美味しい店だって気がつくんだから。素晴らしい慧眼だ。」

光姫「なぁに、年の功というやつじゃ。うむ、ここは三ツ星じゃな。由佳里覚えておいてくれ」

由佳里「了解しました。」

光姫「さて、店主や、お主はこの本を知っておるかの?」

光姫さんは店主に一冊の本を差し出す。

蕎麦屋店主「ええ、知っております。ミトランですよね。」

光姫「実はの、わしらはミトランの調査員をしておってな。この店を掲載したいと思うのじゃが……がいいだろうか?」

蕎麦屋店主「ええ!?うちの店がミトランに!?」


光姫「そうじゃ、これに載れば、いくらか宣伝効果もあると思うのじゃが、どうかの?」

おー、あのミトラン掲載の瞬間に立ち会えるなんて!たしかに、ミトランに載ってもおかしくないほど、ここの蕎麦は美味しいもんな。店主もミトランに掲載されるという価値は知っているようで、自分の店の味を認められたと顔がほころぶ。……っが、すぐにまた暗い表情に戻ってしまった。

光姫「ん?なにか、問題があるのかの?」

蕎麦屋店主「せっかくのお申し出なんですが……実はもう店を畳もうと思ってるんです……」

悠「そりゃまた……残念だな。こんな美味いのに」

光姫「ふむ、良かったら訳をおしえてくれまいか」

蕎麦屋店主「三か月ほど前でしたか……ある日とある商人が、ここの土地を欲しいといって来ましてね……。私も商売がありますし、常連さんもいらっしゃいますから、それは出来ないと断ったんです。そしたら……その日以来、連日のようにいやがらせにあいまして……」

光姫「表の看板や店が汚れているのも、そういうことかの?」

蕎麦屋店主「奴らの仕業です……初めのうちはそれでも掃除をして、綺麗にしていたんですけど……毎日のように汚され、暴れられて……ほとほと疲れ果ててしまいました……」

由佳里「そんな!一生懸命働いている方に嫌がらせをするなんて!」

悠「……(おれの店には嫌がらせ要員みたいな客しか来ていないのは気のせいだろうか……?)」

光姫「なるほどのう……して、その商人の名は……」

「お邪魔しますよぉ」

ナヨっとした男の声が戸口からしたかと思うと、ひとりの男が柄の悪そうな連中を従えて店にはいってきた。

蕎麦屋店主「天釜屋さん……」

天釜屋「あらぁ?かつきさん、お蕎麦屋さんまだ営業されてたんですねぇ。あら、お客さんまでいらしてぇ……ふっ、こんな寂れた店でよく食事ができますこと……よほど貧しいお方なのかしら、ほっほっほっ……」

悠「あー?感じ悪いなコラ……。」

かつき「お客さんに絡むのは止めてください!」

天釜屋「あらあら、こんな汚い店の店主が、大店を五つもつわたくしに意見するというの?」

かつき「ぐっ…」

天釜屋「わたくしがその気になれば、アナタごと店を潰すことだってできるのよぉ?おわかりぃ?優しく言っている内に、さっさと荷物まとめて出ていけや……な?」

光姫「これこれ、それでは脅しではないか。話し合いにすらなっておらんぞ。」

天釜屋「なぁに、このちびっこ。」

光姫「ほぅ、ちびっことな……」

チンピラA「ガキは黙ってろ!」

由佳里「なっ……ここにおわすお方を…」

光姫「待て、ハチ、構わん聞き流せ」

由佳里「でもっ……」

光姫「いいから」

由佳里「はぁい…」
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