ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【3】
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
食い合わせが悪い。そんな言葉が頭をよぎった。天ぷらと西瓜をいっしょに食うと水と油で消化に悪いとされた。実際、胃の負担が増加し、消化に支障をきたすことが確認されているるが……そんな事を考えてしまった理由はひとつ。
「ほいっ!」
「はいっ!」
右から迫りくる上段蹴り、左から襲い来るミドルキック、同時攻撃をおれは左右の腕で受け止める。位置のズレた左右攻撃は厄介だった。力を入れるべき部分が別々になって、万全でガード出来ない。しかも、なにより……。
「風、合わせてくれよ!」
「雷、勿論だよ!」
掛け声こそあるが、おれの耳に届く前に奴らの身体は動いている。全力で両者の足を弾き返して、後ろに引こうとした瞬間、両のつま先に重力が落ちた。踏みつけられている。
後ろにいこうとした推進力が行き場を失い両足の腱が悲鳴をあげた。何本か筋が千切れる音がした。
おれは左右で笑う奴らの顔に向けて両拳を振った。だが、簡単に避けられてしまう。当然だった。左右で足を踏まれているのだ。届く訳が無い。空振った直後に気づくおれは足を抜くも、瞬く間もなく、左右からパンチが飛んできた。
それを一打、一打確実に弾いてガードした。出来るなら掴んで、投げ、またはカウンターナックルに繋げて形勢逆転といきたい。
しかし、それは叶わなかった。いくら、おれが受けの戦術を得意としてても腕は二本しかない……。どちらかの拳を掴んだら、どちらかに打たれる。両方いっぺんに掴んだとしても、両方から殴られる。今のおれは文字通り「手も足も出ない」なのだ。
そんな内心を読まれたのか雷太郎がいった。
「よく凌いだが、決めるぞ」
「了解。ほいっと!」
足首に激痛が走った。パンチばかりに気を取られ過ぎていて、単純な前蹴りで右足が突き立っている。一度、ズレてしまうと後は崩壊だった。世界が一回転する。背中から叩きつけられたと気づいたのは痛みが脳に届いてからだ。
視界に映るのはハイタッチを交わす雷太郎と風太郎。
「風。ナイス一本背負い。」
「雷。ナイスガードブレイク。」
やられ様が容易に想像できた。正確に鋭角な雷太郎の足刀がおれの足首を潰す。予期せぬダメージにすべてのガードとバランスを失なったおれの左腕を風太郎が掴んで投げた。スバラシイコンビネーションだ。寅もこんな奴らによく反撃できたもんだと、肺がつぶれて呼吸もできないまま思考をフル回転していた。このまま倒れて居たらコイツらはこれ以上何もせずに帰ってくれるだろうか……。
「雷、どうしよう。あの女への報告は勝ったでいいのかな」
「……さぁな、アバウトな事しか言われてないしな。証拠写真でも撮っとくか。風」
「えーと、携帯電話は……。」
もはや、勝者の余韻状態だった。正直……腹が立った。意味のわからない襲撃を受けて無様な写真まで撮られる……。笑えなさすぎるとおれは奥歯を噛みしめた。地面を叩いて飛び起きる。
「おっ?」
「あっ?」
「ふっざけんな!!」
実際は叫ぶより手の動きの方が速かったかもしれない。起き上ると同時に伸ばした手で奴らの首をワシ掴み、力任せに前へと押し壁へと叩きつけた。瞬時に手を首から離して拳を握り両人の腹を打った。前かがみの状態になった奴らの頭を掴んで叩きつけあってやった。顔面と顔面がぶつかり合う音は今宵、一番盛大な音だった。左右にはじけ合って倒れそうになった奴らの体躯は寸前の所で止まって、立て直りだした。どうやら、まだまだ、余裕らしい。
こっちも既にスイッチが入っていたので上等だ。どっちにも怒りはあった、だが、より、バロメーターが高かったのはブン投げた風太郎の方。
ピンポイントにぶん殴ろうと拳を打った。バチンっと肉を打つ音と手応え。しかし、横から腕を伸ばした雷太郎に阻まれた。この再、当たればどっちでもいい。風太郎を無視して、雷太郎の腕を掴んだが。前から手刀が伸びてきて、首を振った。間一髪だ。直撃はしないものの耳にかすったらしくジンっと痛む。このまま逃げればさっきの二の前、雷太郎の腕を握りしめたまま一回転した。結えた髪が風太郎の顔を薙ぎ払いつつ、雷太郎をなぎ倒した。
「ずわっ!?」
「がはっ!?」
無意識に近い動作でおれは両手を叩いた。空気が破裂して雷太郎は地面に、風太郎は壁に押しつぶれる。零距離風壁が直撃したのは効いたらしくピクリとも動かなくなった。
食い合わせが悪い。そんな言葉が頭をよぎった。天ぷらと西瓜をいっしょに食うと水と油で消化に悪いとされた。実際、胃の負担が増加し、消化に支障をきたすことが確認されているるが……そんな事を考えてしまった理由はひとつ。
「ほいっ!」
「はいっ!」
右から迫りくる上段蹴り、左から襲い来るミドルキック、同時攻撃をおれは左右の腕で受け止める。位置のズレた左右攻撃は厄介だった。力を入れるべき部分が別々になって、万全でガード出来ない。しかも、なにより……。
「風、合わせてくれよ!」
「雷、勿論だよ!」
掛け声こそあるが、おれの耳に届く前に奴らの身体は動いている。全力で両者の足を弾き返して、後ろに引こうとした瞬間、両のつま先に重力が落ちた。踏みつけられている。
後ろにいこうとした推進力が行き場を失い両足の腱が悲鳴をあげた。何本か筋が千切れる音がした。
おれは左右で笑う奴らの顔に向けて両拳を振った。だが、簡単に避けられてしまう。当然だった。左右で足を踏まれているのだ。届く訳が無い。空振った直後に気づくおれは足を抜くも、瞬く間もなく、左右からパンチが飛んできた。
それを一打、一打確実に弾いてガードした。出来るなら掴んで、投げ、またはカウンターナックルに繋げて形勢逆転といきたい。
しかし、それは叶わなかった。いくら、おれが受けの戦術を得意としてても腕は二本しかない……。どちらかの拳を掴んだら、どちらかに打たれる。両方いっぺんに掴んだとしても、両方から殴られる。今のおれは文字通り「手も足も出ない」なのだ。
そんな内心を読まれたのか雷太郎がいった。
「よく凌いだが、決めるぞ」
「了解。ほいっと!」
足首に激痛が走った。パンチばかりに気を取られ過ぎていて、単純な前蹴りで右足が突き立っている。一度、ズレてしまうと後は崩壊だった。世界が一回転する。背中から叩きつけられたと気づいたのは痛みが脳に届いてからだ。
視界に映るのはハイタッチを交わす雷太郎と風太郎。
「風。ナイス一本背負い。」
「雷。ナイスガードブレイク。」
やられ様が容易に想像できた。正確に鋭角な雷太郎の足刀がおれの足首を潰す。予期せぬダメージにすべてのガードとバランスを失なったおれの左腕を風太郎が掴んで投げた。スバラシイコンビネーションだ。寅もこんな奴らによく反撃できたもんだと、肺がつぶれて呼吸もできないまま思考をフル回転していた。このまま倒れて居たらコイツらはこれ以上何もせずに帰ってくれるだろうか……。
「雷、どうしよう。あの女への報告は勝ったでいいのかな」
「……さぁな、アバウトな事しか言われてないしな。証拠写真でも撮っとくか。風」
「えーと、携帯電話は……。」
もはや、勝者の余韻状態だった。正直……腹が立った。意味のわからない襲撃を受けて無様な写真まで撮られる……。笑えなさすぎるとおれは奥歯を噛みしめた。地面を叩いて飛び起きる。
「おっ?」
「あっ?」
「ふっざけんな!!」
実際は叫ぶより手の動きの方が速かったかもしれない。起き上ると同時に伸ばした手で奴らの首をワシ掴み、力任せに前へと押し壁へと叩きつけた。瞬時に手を首から離して拳を握り両人の腹を打った。前かがみの状態になった奴らの頭を掴んで叩きつけあってやった。顔面と顔面がぶつかり合う音は今宵、一番盛大な音だった。左右にはじけ合って倒れそうになった奴らの体躯は寸前の所で止まって、立て直りだした。どうやら、まだまだ、余裕らしい。
こっちも既にスイッチが入っていたので上等だ。どっちにも怒りはあった、だが、より、バロメーターが高かったのはブン投げた風太郎の方。
ピンポイントにぶん殴ろうと拳を打った。バチンっと肉を打つ音と手応え。しかし、横から腕を伸ばした雷太郎に阻まれた。この再、当たればどっちでもいい。風太郎を無視して、雷太郎の腕を掴んだが。前から手刀が伸びてきて、首を振った。間一髪だ。直撃はしないものの耳にかすったらしくジンっと痛む。このまま逃げればさっきの二の前、雷太郎の腕を握りしめたまま一回転した。結えた髪が風太郎の顔を薙ぎ払いつつ、雷太郎をなぎ倒した。
「ずわっ!?」
「がはっ!?」
無意識に近い動作でおれは両手を叩いた。空気が破裂して雷太郎は地面に、風太郎は壁に押しつぶれる。零距離風壁が直撃したのは効いたらしくピクリとも動かなくなった。