ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【2】

ー大江戸学園:民家区域ー

シオン「通行の邪魔だからと斬ってみれば……奇遇だな、悠」

悠「シオン!」

シオン「ここにいるということは、おまえも佐那子を夜這いに来たのか?」

悠「……んなわけあるかあぁ!」

シオン「ふん……なら、斬らなくて良いか」

悠「おれも斬るつもりだったのかよ……」

シオンの態度は場違いなまでに普段と同じで、おれまでつられて緊張が抜けてしまう。たったいま、ひとりを背中から問答無用で斬っておいて、どうしてこうも淡々としていられるんだか。

チンピラB「てっ、てんめぇ!不意討ちしておいて、粋がってんじゃねえぞぉ!」

シオン「……」

ビュバ!
チンピラ「ぎゃああぁ!」

チンピラA「ひっ……し、シオンって……あ、あの輪月殺方の……聞いてねぇ……そんなの聞いてねえよぉ……」

シオン「……」

ビュバ!
チンピラA「ぐおっ……」

シオンは眉ひとつ、唇ひとつ動かすことなく、悪漢どもを斬り伏せてしまった。そして、何事もなかったように、おれへと向き直る。

シオン「で、夜這いでないなら、どうしてここにおまえがいるんだ?」

どうやらシオンにとって、いまの斬り捨て御免は、羽虫を追い払った程度の行為でしかなかったようだ。

悠「……」

ようなのだが……シオンのスカートはスリットのところから裂けてしまっていて、黒い下着が覗いていた。
おれの視線に気づいたのか、シオンはスカートの裂け目をひらひらと弄ぶ。上半身を見てもアレなとおり、露出に対して無頓着というか、なんというか。

シオン「ふん……激しく動きすぎたようだな。ん?」

悠「み、見てないからな。」

シオン「ふふふ、別に構わないのに」

悠「っか、そんな場合じゃない!佐那子ちゃんが危ないんだ!佐那子ちゃんが菊次郎に襲われてるかもしれない。早くいかないと」

菊次郎の手下どもがここで見張っていたということは、菊次郎本人は佐那子ちゃんの部屋にいるに違いない。

シオン「なん……だと……。あの三下がっ……佐那子の処女は私のものだぁ!!」

部屋を探す素振りもみせず一直線に走り出したシオンの背中を、おれも慌てて追いかけた。

悠「まて、おれも行く!」





ー佐那子の部屋ー

菊次郎「はぁはぁっ……さ、佐那、おまえが悪いんだぞ……お、おまえは僕の許嫁なのに……!」

佐那子「イヤイヤ嫌嫌っ!やっぱ無理、絶対無理!あんたみたいなのと寝るなんて百パーセント無理!」

菊次郎「なっ……おまえ……だ、誰のおかげでこの学園に入れたと思ってるんだぁ!」

佐那子「あんたのパパのおかげでしょ!あんたのおかげじゃ無いわよ!」

菊次郎「う、うぅ……い、許嫁のくせに!僕の許嫁なのに、僕の知らない奴を勝手に部屋に上がらせたくせに!」

佐那子「そんなの私の勝手でしょ!だいたい、許嫁許嫁って連呼しないで。考えただけで鳥肌なのよっ!」

菊次郎「くっ、くそぉ!僕を裏切ったくせにぃ!」

佐那子「きゃあぁ!!誰か助けてぇ!犯されるぅ!」
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