ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【2】

ー大江戸学園・教室ー

由真「ちょっと、小鳥遊。あんたに用がある、って子が来てるわよ」

悠「あー、おれに?」

誰だろうかと思って戸口のほうを見やると……。

佐那子「……」

悠「あ、昨日の……佐那子さん」

由真「誰か知らないけど、早く行ってやんなさいよ」

悠「あ、うん。」

佐那子「小鳥遊さん……昨日はどうもでした。」

悠「いや、おれはなにもしてないけれど……だけど、わざわざそれをいいに?」

佐那子「いえ……昨日はスカッとしたんですけど、そのことでお二人が逆恨みされたんじゃないかと思いまして……」

悠「え……シオンはともかく、おれまで?」

佐那子「そういう人間の小さな人ですから」

悠「はぁ……」

佐那子「とにかく、そういうことですから、夜道とか人通りの少ないところは歩かないように気を付けてください」

悠「あー……分かった、気をつけるよ」

佐那子「それだけいっておきたくて……では、そういうことで。失礼しました。」

佐那子ちゃんは最後にぺこりとお辞儀すると、小走りで廊下を戻っていった。

悠「……気をつけろ、か」

まあ、吉音もいるし大丈夫だとは思うけど、いちおう今日一日くらいは気を付けておくか。

由真「ちょっと、小鳥遊。」

教室に戻るなり、由真が詰め寄ってきた。

悠「なんだ?」

由真「いまの可愛い娘、誰よ?知り合い?」

悠「あー……昨日、ちょっとな」

由真「うわっ!何よ、その意味深な言い方!」

悠「本当にちょっと話をしただけだって。それ以上の深い意味はないって」

由真「ふぅん……まっ、あんたがどこで誰と知り合おうと、私には関係ないから、どうでも良いけど」

由真は言いたいことだけいうと、くるりと踵を返していってしまった。

悠「どうでも良いなら聞くなよな……」







ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

吉音「それじゃあ、また明日ね~」

はな「お疲れさまです」

悠「あいあい、お疲れさん」

吉音とはなちゃんは手を振って、帰っていった。

悠「……結局、来なかったな。」

こうして店仕舞いする時刻になっても、今日も一日、いつもどおりに何もなかった。菊次郎が仲間を連れて乗り込んでくるかも、と内心は冷や冷やしていたんだけどな。

だが、まてよ……菊次郎が佐那子ちゃんのいう通りの性格だとしたら、おれのほうに何もしてこなかったということは……。

おれじゃなく、シオンか佐那子ちゃんを狙うつもりだとか?


そんなバカなと笑い飛ばそうとしたが失敗だった。
そう考えると急に胸騒ぎがしてくる。居ても立ってもいられなくる。

気がつくとおれは走り出していた。
97/100ページ
スキ