ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【2】

ー大江戸学園内:民家ー

シオン「……おや……これはこれは……」

恐る恐るといった様子で出てきた女生徒を見るなり、シオンの剣幕は一気に和らいだのだった。


~事情説明中~


佐那子「……まあ、そうだったんですか。私のせいで眠利さまにご迷惑をかけてしまったをですね……」

シオン「きみのような可憐な人と出会えたんだ。どこが迷惑なものか」

佐那子「まあ……いいですよ、そんなお世辞なんて」

シオン「私が世辞をいうように見えるか?」

佐那子「え、えっと……」

シオン「きみのような可憐な人を前に、事実以上のどんな世辞をいえば良いのかな。教えて欲しいね、是非とも」

佐那子「あ、ぅ……はずかいし……ひ、人が見てます……」

シオン「何をいっている。ここには私ときみ以外、誰もいないじゃないか」

悠「……あの、おれもいるんだけど」

シオン「ああ、そうだったな。忘れてた」

悠「は、ははは……冗談が上手いんだな、シオンは」

シオン「……どうして、私がおまえに冗談をいわなければならないんだ?」

真顔で尋ねられても、おれはどう答えたらいいんだよ。

悠「そ、そういえば、いい匂いがするな。佐那子さん、お菓子でも作っていたんですか?」

結局、強引に話を変えることにした。

佐那子「あ、はい。いまちょうど、ケーキを焼いていたところだったんですよ」

シオン「なるほで。だから、バニラが必要だったんだね」

佐那子「はい……でも、本当はケーキなんて作りたくなかったんですけどね」

悠「あー?でも、美味そうな匂いだぞ」

おれはてっきり、本当はお菓子作りが苦手、といういみでいったのだと思って、そう返した。だけど、佐那子ちゃんは一瞬きょとんとした顔をしてから、おかしそうに笑う。

佐那子「そうじゃないんです。ケーキを焼くのはすきなんですけど、ほら、強要されて焼くのって嫌じゃないですか」

悠「強要されて?」

話がつかめずに聞き返すと、佐那子は話すべきかどうか迷うような顔をする。

シオン「これめ何かの縁だ。話してくれても良いよ」

悠「おいおい、そんな聞き方じゃ……」

佐那子「分かりました。眠利さまがそこまで言ってくださるのなら、お話しします」

……あ、話すんですか。そうですか。

シオン「それで?」

佐那子「私……許嫁がいるんです」

悠「へぇ、許嫁。」

シオン「なるほど、許嫁になれば学園の入学金を払ってやる、といわれたわけか。」

悠「いやいや、そんな、飛躍しすぎで…」

佐那子「そうなんです。私の家は貧乏なものでして、あちらの家に援助してもらわないと、学校なんてとても……」

悠「あー……そうなんですかー。」
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