ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

「ねずみやのスイーツを楽しみにされていたんじゃないですか?」

光姫「ふふふ、楽しみにしておったのは由佳里の方ではないのか?」

由佳里「ふぇ、えっと、あの、それは~」

光姫「のう店主。甘味の類いは置いておるのか。」

悠「あ、こちらがお品書きです」

光姫「ほぅ、これはなかなか。では、団子をつけてやってくれ」

悠「はい、お待たせしました。」

由佳里「ありがとうございます。お団子大好きです♪」

悠「それはよかった。」

おれはお茶に並べて団子の皿をおく。

光姫「ふむ…茶葉は特別なものを使っておるのか?」

悠「いえ、普通の茶葉です。」

光姫「それにしては香りがよいが、なにかコツでもあるのか?」

悠「それはお湯の温度だ。茶葉の香りを完全に開かせるために沸騰した湯じゃなくて少し冷ましたくらいで淹れるんだ。」

由佳里「わたし、猫舌なんで嬉しいです」

悠「ただほうじ茶や玄米茶だと沸騰した湯のほうがいいし、紅茶や中国茶、お茶の種類にもよるけどな。あとは最後の一滴までしっかり注ぎきる。これ重要。」

光姫「お主、若いのになかなか詳しいの」

悠「懲り性なもんでね。祖母や母の淹れ方を真似たり、ジジイ…祖父は味にうるさい奴だったし。」

光姫「なるほど…通りで妙に懐かしい味がするわけじゃ」

由佳里「もぐもぐ」

光姫「お前はいつもお茶よりも団子じゃのぅ」

由佳里「もぎゅ?」

光姫「しかし、団子もよい味じゃな」

悠「嬉しいな。」

光姫「どれ、コレをやろう」

悠「ミトラン?何だ…何ですこれは?」

光姫「学内のうまいもののガイドブックじゃ。」

悠「へぇ、ありがとう」

由佳里「ミトランはですね、この…」

光姫「口元にみたらしのあんが付いておる」

由佳里「あ、あわわ…す、すみません~」

光姫「ところでこの店の屋号はなんという?」

悠「小鳥遊堂です」

光姫「小鳥遊…その由来は?」

悠「ああ、俺の名前が小鳥遊悠なんだよ。そうだ、そちらの二人は?」

光姫「ん?この店では茶を飲むのに名乗らないとダメな会員制の店なのか?」

悠「そういうつもりはないけどよぉ」

光姫「ふふふ、からかっただけじゃ。わしは、み……御堂光姫(みどうみつき)、甲級三年じゃ。そしてこやつが…」

由佳里「乙級二年の八辺由佳里(はちべゆかり)で…あ。私のお団子!」

悠「え?」

黄色い小さな塊がとんとんっと由佳里の肩から頭の上にかけ上がるのが見えた。

由佳里「こ、こらぁ!トビザル!」

トビザル「ウキキ!」

悠「これも剣魂か?」

由佳里「えっと、あの、わたしの、剣魂のトビザルです!」

光姫「相変わらず騒々しいのぉ、お主らは…」

トビザル「ウキキ!」

由佳里「あ、待て!」

悠「おい、危ないぞ」

ドッ…

由佳里「ご、ごめんなさい~。」

「いてえなぁ、嬢ちゃん」

由佳里を取り囲んだのは見るからにがらの悪い集団だ

悠「よりによってまたがらの悪そうなのにぶつかったな…」
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