ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【2】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

天狗党の残党の一件は何とか決着がつき、おれたちは茶屋へ戻った。途中寅は帰ってしまったので吉音と茶をすすりながら、一日の疲れを癒す。

悠「ふぅ、本当に疲れた。」

吉音「悠、なんかおじいちゃんぽいよ」

悠「ほっとけ。」

天狗党残党の後始末は、最終的に逢岡さんたち南奉行所に任せてきた。
あれ以上、おれたちにできることはなさそうだったし、それこそ後は奉行所の仕事だ。
……そういうまでもなく、もともとは町方か火盗かの仕事だった。

なぜ光姫さんは、奉行所ではなく、出来たばかりの目安箱へ依頼を持ってきたのか。それはきっと、おおきな手柄を立ててこの目安箱を信用させ、学園のみんなに知らしめるためだろう。

最初から光姫さんと逢岡さんは通じ合っていて、目安箱の宣伝に一役買ってくれたんだ。

吉音「でも、目安箱っておもしろいねー。もっと来ないかな―」

悠「さっきみたいな依頼は来ない方がいいんだけどなー」

吉音「えー、悠だって今日とっても楽しかったでしょー」

悠「それとこれとは話がべーつ」

この学園には本当に色々な生徒が居て、その数に見合っただけの悩み事が溢れかえっている。
目安箱。

始めたのは吉音の思いつきでこれからどうなっていくのか分からないけれど、きっとトラブル以上に素敵ななにかを運んできてくれる。

今のおれには不思議とそう感じられた。

吉音「明日もいっぱい悩み事はいってたらいいな……できればドタバタで楽しいやつ。」

悠「だからダメだっての。」

吉音「えー……」

悠「さて、店片づけるかな。吉音、手伝ってくれ。」

吉音「ちょっとまって!!」

悠「なんだ?どうした?」

吉音「おなかすいたよぉ~!!」

今の今までなにも言わなかったくせに急に騒ぎ出す。

悠「家帰って飯食え」

吉音「だめーもたないーおなかすいたー悠のごはんたべたいー!!」

悠「あのなぁ……おれだって疲れてるんだぞ。」

吉音「だめっ?」

そんなうわ目づかいに指を咥えておねだりしてくるなんて、どこで覚えたんだ。
可愛いじゃねぇかこの野郎。

悠「……」

吉音「ウルウル…ウルウル…」

悠「はぁ…わかったよ。」

吉音「やったー!悠、ありがとー!!」

悠「だあぁ!抱きつくなっての!」

吉音「えー、なんで、なんでー?」

悠「飯作れないだろ。とりあえず。適当に茶菓子のあまり食ってろ」

吉音「はーい!おゆつ、おやつ♪」

悠「おーい、明日の分まで喰うなよ頼むから……」

吉音「もぎゅもぎゅもぎゅもぎゅ♪」

悠「……」

どうやら、晩飯つくりつつ明日の仕込みもしなくては在庫が無くなることが確定した。
おれの闘いは今かららしい……。
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