ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【2】

ー大江戸学園内・屋敷ー

吉音「おとなしく捕まろうって人はいないの?」

天狗党員H「あ、当たり前だ!」

天狗党員I「徳田新!今こそ我ら天狗党の恨み張らすとき!覚悟~!」

残党のひとりが、刀を振りかぶりながら吉音の前に躍り出た。

吉音「知ってる?そーいうの逆恨みっていうんだよ?」

天狗党員I「ぐぇっ!」

斬り込んできた残党の刀を軽くいなし、楽々と相手のことを斬り飛ばす。

吉音「さーとキミたち、悪者退治の時間だよ!いっぱいお仕置きしてあげる!」

今日一番の笑顔で吉音が宣言すると同時に、大立ち回りが始まった。……吉音のやつ、大暴れしたいからってわざわざ挑発しやがったな。

天狗党員G「一対一で敵う相手じゃない!一斉に襲いかかれ!」

吉音「これこれ!やっと楽しくなってきたよ、っと!」

振り下ろされる斬撃を、横合いからの一閃を、背後からの一撃を、時には体を捻って回避し、時には刀で受け止め、時には受け流して無効化する。
どれほどの斬撃打撃が襲いかかろうと、吉音の顔から余裕の笑みが崩れる事はない。

華やかに舞う吉音とは逆位置側では天狗党員の悲鳴が聞こえた。

寅「邪魔だっ!」

天狗党員I「ひぎぁぁ!?」

見てみると刀の間合いを潰し、懐に入り込んだ寅の右フックが横面にめり込むシーンだった。

天狗の面が砕けながら倒れていくのは下手なB級映画より怖い。

吉音「よーし、あたしもいっくぞぉ!そりゃああぁぁぁ!」

掛け声とともに、縦横無尽に振るわれる紅の刃。休む暇もなく繰り広げられるハイスピードの猛攻に、天狗党の残党はひとりまたひとりと地面に膝を着いていく。

その様子はまさに二つのハリケーン。吉音と寅の通った跡に立っていられる者はなし。そしてついに……。

吉音「キミで最後!」

寅「テメェでラストだ!」

吉音「成敗!」

マゴベエ『ピュイイィィーッ!』

天狗党員G「げふぅぅ!」

寅「死ね!」

天狗党員J「ごぇっ…!」

あっという間の出来事だった。あれだけいた天狗党の残党も、全員が地面に突っ伏している。

悠「結局、おれの出番はなかったな。」

なるほど……これは確かに吉音向けの依頼だ。天狗党の連中はよっぽど吉音に恨みでもあったのか、結局おれのことは一度も狙わなかったし。

吉音「もしかして、悠も大暴れしたかった?」

悠「いやいや。」

大暴れって自覚はあったんだ……。

寅「暴れたい?なんなら、俺が相手してやろうか?」
笑い混じりに声をかけてくる寅は倒れてる天狗党員の足を持って、脱獄用に掘っていた穴に引きずっていっている。

悠「お前の相手なんか絶対に御免だよ。っか、お前は穴の中に落とそうとするな!」

そんなやり取りをしていると、屋敷の庭に大勢の生徒がなだれ込んできた。

想「南町奉行所です。ひとり残らずひっ捕らえなさい」

寅「ちっ、埋め損ねたか」

悠「やめんかい!」

逢岡さんの指示で天狗党の残党たちがしょっ引かれていく。
83/100ページ
スキ