ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【2】

ー大江戸学園内・屋敷ー

たどり着いた屋敷の前には、大勢の生徒が立ち尽くしていた。屋敷を占拠され、追い出された生徒たちだ。誰の顔にも困り果てた表情が浮かんでいる。

悠「……新、人間笑顔が一番、だよな?」

吉音「そのとーり!」

悠「じゃその笑顔を奪うやつは当然、悪者だよな」

吉音「いうまでも無くね。」

寅「細々なげーよ。」

悠「……よし。いっちょやってやるか。新、寅」

吉音「もちろん!ぎったんぎったんにしてやるんだから!」

寅「骨くらいなら折ってもいいよな?」

悠「……許可する。」

寅「よし」

人の間をぬって門へとたどり着くと、ひとりの生徒が声をかけてきた。

男子生徒D「あ、あんたら!この屋敷には近づかない方がいい!今この屋敷には… 」

吉音「大丈夫!悪者はあたしたちが退治してくるから、みんなはもう少しだけ待っててね」

特に気負いも無くにっこり笑う吉音に、声を掛けた生徒が呆然としている。

男子生徒D「……誰なんだいあんたらは」

吉音「もちろん!正義の味方だよ!」

寅「正義のみかたぁ?」

悠「一応そうだろ。」

吉音「それじゃあ鬼退治といきますかっ」

寅「……鬼?」

悠「おれを見んな!天狗!天狗退治!」

ほとんどおふざけ状態でおれたちは門をくぐった。屋敷の中に入ると、天狗党の残党とおぼしき生徒たちが地面に大穴を掘っていた。
これってもしかして……。不法占拠された屋敷、地面に掘られた大穴、近くには天狗党の生徒が捕まる謹慎者棟。

集まった情報が一つの可能性を示している。

悠「……脱獄用のトンネル?」

まさかそんなものを本気で作ろうと考えるやつがいるとは……。見張りらしい見張りもいなかったし、どこか抜けたところのある一党だなぁ。

天狗党員G「なんだ貴様らは!」

おれたちの存在に気づいた天狗党の残党のひとりが、大声をあげてコチラを威嚇する。
その声につられて、他の残党たちも作業を中断してぞろぞろと集まってきた。

吉音「見つかっちゃったね」

寅「別に隠れてもねぇだろ」

吉音「それもそっか。……でもちょうどいいかも」

寅「まぁな」

吉音と寅は少し笑いを含んだ声でそう呟くと、吉音は流れるような動作で鞘から刀を引き抜き。紅の刀身を輝かせ構えをとる。
寅は袖を捲りあげて拳を握りファイティングポーズをとる。

吉音「天狗党の残党たち!あたしの顔見忘れたか!」

吉音の名乗りに残党たちの顔色がかわった。

天狗党員G「お、お前は!」

天狗党員H「徳田……徳田新!どうしてここに!」

天狗党員I「それに……右京山寅……裏切り者が。」

そりゃあれだけ邪魔されたんだ。吉音の顔を忘れるはずないよな。寅に至ってはもと用心棒だし。

吉音「どうして?そんなの決まってる、お前たちを捕まえるためだ!おとなしくお縄になりなさい!」

吉音の宣言に、残党たちが慌てて刀を構える。
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