ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【2】

ー大江戸学園・廊下ー

悠「なぁ新ちょっと……」

吉音「ふぇっ!な、なに悠!?どうしたの!」

悠「……どうしたのはおれの台詞なんだけど。」

なぜか挙動不審に慌てふためく吉音。視線はキョロキョロと定まらず、声は微妙に上ずっている。そんな怪訝な態度の吉音と、歪んだ手すりを何度も交互に見た後、中村さんは意味深にうなずいた。

往水「ふむ……小鳥遊さんと新さんは確か二年の「め組」で間違いねぇですかい?」

悠「ああ、なんかしらんがおれも二年だから、間違い無いけどどうかしたか?」
往水「いえ、別に大したことじゃ無いんですけどね。この階段、小鳥遊さんたちのクラスからだとよく使うんじゃ無いかと思っただけですよ」

吉音「ぎくっ!」

悠「そりゃまぁ、外に出るのも食堂に行くのも、ここ通るのが一番の近道ですし……」

往水「ほう、食堂ですかい……そりゃ毎日昼休みにもなると、たくさんの腹をすかした獣がこの階段を走り抜けて行くんでしょうなぁ」

吉音「ぎくぎくっ!」

昼休み、食堂への近道、腹をすかした獣、挙動不審な吉音、歪んだ手すり……その答えは……

悠「おい新……」

吉音「ぴゅ~ぴゅ~ぴゅ~ぴゅ~」

悠「……ほんと良くも悪くも裏表がないよな新は」

それで誤魔化せると思ってるのが驚きだよ 。

往水「まぁ憶測でものをいっても始まりません。今はこの歪んだ手すりをどうする方が先決でさぁ」

悠「言い出したのは中村さんですけどね……」

往水「そうでしたっけ?」

悠「……いや、もういいです」

さときみたいな推理を聞く限り、有能な人とも思えるんだけど……。でも中村さんと話してるとすごく疲れるんだよな。

往水「よし、ここはあっしに任せてもらいましょう。直接担当者のところにいって、事情を説明してきますよ」

のろのろと歩き出す中村さんなの背中に、慌てて声をかける。

悠「そんなことをしなくても、携帯で逢岡さんに連絡しときますよ?」

往水「いいですよ~。アタシにまかせてくださいよっと」

中村さんの姿はあっという間に見えなくなった。

悠「……どう考えてもサボる口実じゃないか。今日はもう戻ってこないんだろうなぁ。とりあえず保守担当には連絡がいくだろうから、この依頼も完了、と」

吉音「ぴゅ~ぴゅ~ぴゅ~ぴゅ~」

悠「いや、それはもういいから……次いくぞ、次」

吉音「はーい!」





ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

悠「『アルバイト人員を募集しています。ですが人がきてくれません。どうすればいいでしょうか?』」

吉音「えっと……これも仕事なの?」

想「まぁ、悩みごとには間違いないですね……」

さすがに逢岡さんも少し困惑顔だ。

悠「とりあえず、差出人のところにいくか」

吉音「うん、いくみんがいなくなって二人になっちゃったけど、がんばろーね。悠」

悠「まぁ中村さんがいてもいなくても、大して変わんないだろうしな」

いや、むしろいないほうが順調に話が進む気がする。

想「では、わたしもそろそろ町奉行の仕事に戻ります」

悠「すみません留守番ばかり任せちゃって」

吉音「色々ありがとう!今度は想ちゃんもいっしょにいこーね!」

想「ええ、お二人とも頑張ってくださいね。」
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