ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【2】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

想「二人とも頑張って来てください」

吉音「あれ?想ちゃんは一緒にいかないの?」

想「はは、私は留守番しておきますよ。これでも南町奉行ですからね。私が直接出向いたりなんてしたら、変に話がこじれるかもしれませんし」

純粋に首を捻る吉音に、逢岡さんは苦笑いを返す。

悠「中村さんはどーします?」

往水「あー、お奉行さまの代わりといっちゃ変なんですが、アタシはついていってみようかと思います」

悠「え、来るんすか?」

往水「おや?アタシが参加するのはそんなに意外ですかい?」

意外というか、中村さんの性格を考える限り自分から面倒ごとに巻き込まれにいくとは思えなかった。

悠「本当に手伝ってくれるんすか?」

往水「いえいえ、手伝いはしませんよ」

悠「あー?」

往水「だから、ついていって「見る」んですよ」

悠「……見るだけ?」

往水「それ以外に何をしろと?」

悠「……もういい。寅、お前はどうするよ?」

寅「客を働かせようとすんな。」

悠「どいつもコイツも……」

吉音「ほら悠!はやく出発しようよ!」

悠「はいはい。じゃいってきます。逢岡さん、はなちゃん。あと寅」

想「はい。いってらっしゃい」

はな「いってらっしゃいです」

寅「……」







ー長屋ー

そんなこんなで、おれ、吉音、中村さんの三人は問題の長屋へとやってきた。

悠「ごめんくださーい」

男子生徒A「はいはーい!ちょっとまってくださいよっと!えーと……おたくら、どちらさんで?」

悠「あー……なんていったらいいかな、おれたち、トラブルシューター…いや、なんでも屋みたいなことをしてて……」

男子生徒A「はぁ、なんでも屋……ですか?」

男子生徒の目が訝しげに歪む。まぁそれが当然の反応だよな。おれだって、いきなり家になんでも屋なんて名乗る人間が来たら警戒するだろうし。

さて、どう話を切り出したもんか……。

吉音「あたしたち、目安箱から来たんだよ」

男子生徒A「目安箱?」

吉音「そうそう!どんな悩みも一瞬解決!あなたの町のなんでも屋さん!もしなにか困ったことがあったら相談にきてね」

男子生徒A「へぇ~、そんな便利なもんがあんのかい」

おれが悩んでいるうちに、吉音があれやこれや話を進めていく。天真爛漫な吉音の笑顔。それに感化されてか、男子生徒の顔にもいつの間にか笑顔が浮かんでいる。

往水「ほぉ~、大したもんですなぁ新さん。あっという間に相手の警戒をといちまいましたよ」

悠「あの誰にでも好かれる裏表なさは、一種の才能ですよ。(っと吉音が頑張っているのに、おれだけボーッとしているわけにもいかないな)……実は、その目安箱に苦情の投書がありまして」

男子生徒A「苦情ですかい?」
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