ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【2】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

想「中村さんは同心ですからね。私よりも中村さんのほうがお役に立てることも有るでしょう」

往水「帰ってもよろしいですかね?」

想「いけません。お仕事ですよ」

往水「あのぉ……見物するだけにしていただけると非常に嬉しいんですが」

想「ここに来たのが運の尽きです、観念してください」

往水「とっほほ……こをなことなら真面目に見回りをしておくんだった」

同心がお奉行さまの前で、こんなに堂々残念がるなんて、いろんな意味で規格外だなぁ。

想「さぁ、目安箱を開けてみましょう」

吉音「よ~し、いっくぞー!」

悠「やれやれ、新宿でもこんな事になろうとは。これからどんなことが始まるのか……」




【依頼りすと】
・目安箱
~依頼内容~

目安箱をはじめたよ!



吉音「それじゃあ改めまして。記念すべきお悩み第一号は!」

まるでくじ引きを引く子供のように、無邪気な笑顔を浮かべながら目安箱の中に手を伸ばす。

寅「……」

悠「見に来たのか」

寅「なんか面白そうじゃねぇか」

吉音「じゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃら……じゃじゃん!これだー!」

悠「そんなに悩むほど中身入ってないだろ」

吉音「こういうのは気分だよ!き・ぶ・ん!」

吉音のやつ、テンション高いなぁ。

想「それで、なんと書いてあるのですか?」

吉音「ああ、うん。えっとねぇ……『隣の主人が度々歌う。別に歌自体はかまわないのだが、とんでもない音痴なのがたまらない。なんとかしてくれ』」

悠「……え?それだけ?」

吉音「うん。これだけ」

悠「そりゃまた、ずいぶんと素朴な悩みだな……」

ぶっちゃけ地味というか……。

吉音「ん~~……、あたしが想像してたのとなんかちがうなぁ」

吉音の顔に困惑の二文字が浮かぶ。その気持ちはよく分かる。きっと今鏡を見たら、おれも吉音と同じような表情をしているはすだ。別に大きなトラブルを望んでるわけじゃないけど、いくらなんでもこれは……。

悠「ちょっと、拍子抜けだな」

吉音「……うん」

想「そんな風にいうもんじゃありませんよ二人とも」

悠「いや、でもこれ、いくらなんでも地味すぎやしませんか?」

想「私たちから見たらそうかもしれません。ですが、依頼者にとっては切実な問題なのでしょう。……こういうのは自分の身に置き換え考えたら分かりやすいと思いますよ」

悠「自分の身に置き換える……ですか」

目を閉じて想像を働かせる。隣の住人。突然歌いだす。しかも音痴。頭の中に夜な夜なパンクを大熱唱する由真の姿が想い浮かんだ。……確かにこれは嫌だなぁ。

悠「……しゃーねぇか。噛んじまったトラブルだし、新。」

吉音「うん!初出勤だね!」
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