ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【2】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

小鳥遊堂の軒先に目安箱が設置されて数日。ぼちぼちではあるが投書が集まり始めていた。

吉音「やった!ちゃんとお悩み相談がきてるよ!」

想「ふむふむ……滑り出しは良好ですね。もっとも悩み多きことに喜んでもいられないのですが」

悠「逢岡さん、お忙しいのに来ていただいて良かったんですか?」

想「毎度というわけには、少なくとも初回だけはと思いまして。南町奉行公認ということにしておけば、あなた方もいろいろと動きやすくなるでしょう?あくまで認めているというだけで、公式の機関ではありませんが」

吉音「んーん!それでも助かるよ、ありがとう!」

いざというときは南町奉行の名前を出してもいいってことか。随分な大盤振る舞いだな。裏を返せば、それだけの関係が、吉音と逢岡さんの間にはあるってことか。まぁ、詮索するのはやめておこう。

往水「おや?お奉行さままで一緒になって、こりゃ一体なんの集まりですかい」

悠「ああ、中村さん。いらっしゃい」

いつも通り、ふらっとした態度の中村さんが小鳥遊堂に顔を覗かせた。

想「中村さん、またサボりですか?今は見回りの時間だったと記憶してるのですが?」

往水「そんな滅相もない。コレも立派に仕事のうちですよ」

想「見回り中に茶屋に寄るのが仕事だと?」

往水「いえいえ。ここだけの話、この茶屋はこの辺り一帯で一番の要注意物件でしてね」

想「要注意物件ですか?」

往水「ええ、風の噂によるとですねぇ。実はこの茶屋、天然記念物並みに珍しい鳥の密売を行ってるとか、なんでも、閑古鳥っつう目には見えない鳥が居るそうで……仕事熱心な同心のあっしとしては、そんな胡散臭い商売、放って置けないって次第でさぁ」

寅「はははは。」

悠「……胡散臭いって台詞、アンタにだけはいわれたくねぇよ」

よくぞここまでポンポンといい加減な言葉を吐けるものだ。っか、店の中で寅が爆笑してやがる。

吉音「実はね!今ちょうどコレを開けようと思ってたところなんだよ」

【目安箱】

往水「ん~?こりゃいったい……?」

きょとんと首を傾げる中村さん。

吉音「目安箱だよ。みんなの悩みごとを書いていれてもらって、それをあたしたちが面白おかしく解決するの!」

悠「面白おかしくしちゃダメだろ」

吉音「そんなことないよ!やっぱり笑顔が一番だからね!」

往水「なるほど。そーいうことですかい。で、お奉行さまはその立ち会いってとこですかい?」

想「そんな仰々しいものじゃありませんよ。徳田さんのいち友人として、何かお手伝いできることはないかと思いましてね。」

吉音「せっかくだからいくみんも一緒に見ていかない?」

往水「あっしもご一緒してよろしいんで?」

吉音「もちろんだよ!」
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