ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【2】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

悠「ゲホッゴホッゲホッゲホッ!!」

咳き込みながらのたうつ悠は毒を浴びた芋虫のようだった。

寅「……」

吉音「……」

はな「……」

悠「おぇっ…ゲホッゲホッゴホッ…うぇっ…うぇぇっ……ゲホッ…」

吉音「悠、生魚食べられないの?」

はな「生魚じゃなくわさびが駄目だそうです」

寅「マジか……。」

悠「はぁはぁ……はぁ……死ぬかと……思った。あー……。」

はな「大丈夫です?」

悠「いや、だいじょばない……今日は一日ワサビの風味がこびりついたままになる。」

寅「お前、その身なりでワサビ食えないのかよ」

悠「人間無理なもんの1つや10つくらいあるわい!」

寅「1つや10つてなんだ」

吉音「ねー、悠もうお寿司食べないの?食べていい?」

悠「あー、おれはもうガリしか食えんし。食ってい…」

吉音「いただきまーす。」
言い終わる前に吉音は既に口を放り込んでいる。

悠「躊躇ねぇな……っか、今さらだが寿司なんてどした?」

寅「あぁ、ちょっと左近の奴と彷徨いてて……驕らせた。」

悠「なんか大事な場所はしょらなかったか?」

寅「別に」

悠「あー…駄目だ。舌がビリビリする。茶おかわり淹れよ」

寅「ビリビリするか?」

はな「ツーンですよね。」

吉音「悠、わたしもお茶!」

悠「へいへい。」

寅「尻に敷かれてるなお前……。」

悠「新の尻になら敷かれてもいいな。いや、むしろ敷かれたい的な。」

寅「アホか。」

はな「アホですよ。」

悠「アホアホいうな。」

吉音「むぐむぐ♪」

寅「こっちは聞いてねぇしな。っていうかよぉ、お前いいのか?」

悠「あー?」

寅「客。」

悠「ギャグ?ギャグなら任せろ。猫の皿か?道具屋か?なんでも噺てやるぞ。」
寅「ギャグじゃねぇ。客だ」

はな「しかも、猫の皿も道具屋もギャグではなく、落語です。」

悠「客ったて、居ないのになにを心配する?」

吉音「だよねー。」

寅「だよねー……じゃ、ねぇし。居ないから心配も違うだろ。」

はな「すいませんです。お客がいないのが当たり前すぎて、それが普通と思っちゃてるんです。あと、悠さんは脳が腐ってるんです」

悠「誰が腐乱死体だ。」

寅「いってねぇよ」

はな「いってないです」

吉音「プリン?」

悠「いってねぇよ!!どっからプリンの話題が出た!?」

寅「頭腐ってンのもうひとりいるぞ」

はな「新さんは……温かいだけです」

悠「それフォローなってないよ」

吉音「えへへ」

悠「いや、だから誉められてないから。」

寅「ふぅ……アホばっかりか。」

悠「アホで括るな。」

「すいませーん。」

はな「はーいです。アホ……じゃなく悠さん、お客さんですよ」

悠「へーい。」

寅「……(アホって言われたの気づいてないのか、流したのか…どっちだ?)」
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