ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【8】

ー大江戸学園:林内ペンションー

葉月と飴矢は部屋に戻り、団子沢はチェックアウトしてステラと一緒に返った。釜石はそのまま木工所の仕事に行った。

和斗は自分の部屋に戻って、夕方近くまで眠った。久しぶりに熟睡したせいか、足首の痛みは殆どなくなった。

起きてからバーベキューの準備を手伝いに行ったが、厨房に入ると飴矢がいて肉を串に刺していた。どうしたのかと思ったら

飴矢「僕は食べるのが専門だったけど、自分でも作ってみなきゃ、料理のことが分からないと思ってね。」

バーベキューソースは、皿井と飴矢と三人で考えた。知恵を出し合って作ったせいか、ソースの味は最高の出来だった。

皿井が串をひっくり返しながら。

皿井「さあさあ、どんどん食べて呑んでください、今夜はうちのサービスです。」

釜石「皿井さん、借金がチャラになったからって大盤振る舞いしてたら、また赤字になっちまうぞ。」

釜石が冷やかした。大丈夫です、と皿井はいった。

皿井「これは、皆さんへの感謝のしるしですから。」

ステラ「釜石さんこそ、様子へんよ」

釜石「なんだとぉ。どこが変なんだよ」

ステラ「なんか、ナヨナヨしてる。カミングアウト、したから?」

釜石は見る見る顔を真っ赤にして

釜石「じょ、冗談じゃないわよ!」

突然オネエ言葉になって身をくねらせた。

みんなあっけにとられていたら

ステラ「やっぱり、そうじゃない。恥ずかしがらなくて、いいよ。」

釜石「馬鹿野郎。今のはウケを狙ったんだ。」

ステラ「おー、怖い、ダーリン、ヘルプミー」

ステラは隣の団子沢に抱きついた。

葉月「あー、さすがに眠いなぁ。ぜんぜん寝てないから」

和斗「あれ、部屋で寝てたんじゃないんですか」

葉月「ううん。自分探しの原稿を書いてたの。」

和斗「あれ、原稿はボツって、あきらめたんじゃ……」

葉月「けさ、悠さんの話を聞いてて、アイデアがひらめいたの。自分は探すものじゃなくて、自分で作るものだって。」

和斗「じゃあ、書き直した原稿を送ったんですか。」

葉月「うん。締め切りギリギリだけど。」

ふと、どこかでスマホの着信音が聞こえた。

皿井がスマホを耳に当てると目を見張った。

皿井「えっ。ほんとうかい?そりやうれしいよ……うん、ありがとう。」

皿井が笑顔で電話を切ったあと葉月が聞いた。
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