ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【8】

ー大江戸学園:林内ペンションー

悠「事件のことを書くのは構わないが、おれ達のことはことは伏せてくれ。他の皆もおれと一応、城のことは口外しないようにしてくれ。今後の動きに影響するから。」

みんなは、おずおずとうなずいた。

皿井「あのう、このペンションは、営業を続けていいんでしょうか。」

悠「なんでそんなことを聞く?」

皿井「鮒口さんが捕まっても、借金したのは事実ですから…」

悠「鮒口は違法な金利を取っていた。返済義務はないし、抵当権は無効だ。」

皿井「ありがとうございますッ!」

皿井は頭を下げると、涙をこらえるように目をしばたたいた。

和斗「悠さんのこと、ずっと誤解してました。てっきりヤクザだと思いこんでて……」

悠「気にするな。おれたちが、そうなるように仕向けたんだ。」

和斗「でも五億円を強奪した犯人かとも疑いました。」

悠「ふふっ、犯人だと疑ったのは、おれたちだけじゃないだろ。」

すみません、と和斗はいって、皆を見渡した。

和斗「皿井さんや団子沢さんも疑いました。釜石さんのことも、ちょっとだけ……」

釜石「水くせぇなぁ。俺に直接聞けばいいじゃねぇか。ねえ兄貴、お嬢」

悠「まだ、んなこと言ってるのか。」

悠は顔をしかめ、城は苦笑いした。

ステラ「この人はね、悠さんのこと、好きなのよ」

釜石「馬鹿野郎っ!変なこと言うんじゃねぇっ!!」

釜石は怒鳴ったが、顔が真っ赤になっている。城は動揺した様子で目を白黒させて悠は何とも言えない表情になっていた。

飴矢「和斗くん、僕のことは疑わなかったの?」

和斗「ええ。葉月さんとも話したんですけど、銀行強盗の犯人がグルメブログは書かないだろうって。」

悠「ここ何日か、ブログを更新してないな。」

と悠が言った。えっ、と飴矢はのけぞった。

飴矢「ぼ、僕のブログを見てたんですか?!」

悠「ああ。ここに出入りする人間は、片っ端から調べたな。」

飴矢「なんだ。そういうことだったんですね。」

悠「いや、それだけでじゃない。最初は捜査のつもりで見ていたが、写真のセンスもいいし料理の知識も豊富だ。店に対する誹謗中傷を控えたら、もっと読者も増えるだろう。」

飴矢の丸い顔がくしゃくしゃになったと思うと、目からどっと涙があふれた。飴矢はしゃくりあげると

飴矢「そんなことを言ってくれたのは、悠さんが初めてです。ぼく、ホントはブログで自作自演してたんです。自分でいいコメントをつけたり、アクセスが多いように偽装してたり……」
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