ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【8】
ー大江戸学園:林内ペンションー
もう朝の九時をまわったが、ペンションには大勢の捜査員がいて現場検証と事情聴取が続いている。和斗、葉月、皿井、飴矢、ステラ、団子沢、釜石の七人はかわるがわる事情聴取を受けたが、今後も不明な点があれば事情を聞くので、番所に出頭してほしいといわれた。
鮒口は、既にパトカーで警視庁本部に移送された。鮒口の供述によれば、盗難車が発見された草むらにあった黒いワゴン車はやはり偽装で、事件のあと鮒口が湖に沈めたという。
囲炉裏があったテーブルは、操作が終わるまで証拠物件として保全される。
あのテーブルはもともと天板が外れる構造で、台座の中は空洞になっていた。鮒口はそこに金を隠して天板が外れないよう、釘を打ちつけたらしい。
悠「どうして銀行強盗なんてやった?」
鮒口「あの頃は仕事も金もなくて、むしゃくしゃしてた。だから大金を掴んで人生を変えたかった。みんなに認められたかったんだ。」
悠「誰かに認められたいという欲求は誰にでもある。けど大金があったところで、本質的に認められはしない。金目当ての連中が認めたふりをするだけだ。」
鮒口「店が流行りだして、それがわかった。あの金は時効まで使えないから、商売を頑張るしかなかったんだ。」
悠「……それで繁盛するとは皮肉なもんだな。」
鮒口は唇を噛んでうなだれた。
ペンションの外では、近所の住民たちががやがや騒いでいる。あたりに警察車両が何台も停まっているから、不審に思ったのだろう。まだマスコミは来ていないが、あしたには大変な騒ぎになりそうだった。
事情聴取が終わって、みんなリビングダイニングで休憩した。
囲炉裏のあるテーブルは使えないから、七人はふたつある四人掛けのテーブルに腰を降ろした。ステラと団子沢は新婚夫婦の様な面持ちで、肩を寄せ合っている。
朝食の時間はとっくに過ぎているが、準備をするどころではなかった。悠と城は、部屋の隅で捜査員たちと立ち話している。
葉月「あたしの推理も、まんざらでもなかったでしょ。」
和斗「五億円がこの付近に隠されてるって、最初からいってましたよね。」
葉月「でも、お金の隠し場所がこのペンションとは思わなかった。」
和斗「葉月さんは、今日チェックアウトの予定でしたが……」
葉月「これじゃ、まだ帰れないよ。」
和斗「よかった。いや、予定が狂ってよくないでしょうけど……」
葉月「ううん。あたしもよかった。和斗君と一緒にいたいし」
和斗は顔が火照るのを感じつつ
和斗「……僕もです」
葉月「自分の原稿はボツったけど、この事件のことを書こうと思うの」
和斗「そりゃあいい。大ニュースですもんね。」
もう朝の九時をまわったが、ペンションには大勢の捜査員がいて現場検証と事情聴取が続いている。和斗、葉月、皿井、飴矢、ステラ、団子沢、釜石の七人はかわるがわる事情聴取を受けたが、今後も不明な点があれば事情を聞くので、番所に出頭してほしいといわれた。
鮒口は、既にパトカーで警視庁本部に移送された。鮒口の供述によれば、盗難車が発見された草むらにあった黒いワゴン車はやはり偽装で、事件のあと鮒口が湖に沈めたという。
囲炉裏があったテーブルは、操作が終わるまで証拠物件として保全される。
あのテーブルはもともと天板が外れる構造で、台座の中は空洞になっていた。鮒口はそこに金を隠して天板が外れないよう、釘を打ちつけたらしい。
悠「どうして銀行強盗なんてやった?」
鮒口「あの頃は仕事も金もなくて、むしゃくしゃしてた。だから大金を掴んで人生を変えたかった。みんなに認められたかったんだ。」
悠「誰かに認められたいという欲求は誰にでもある。けど大金があったところで、本質的に認められはしない。金目当ての連中が認めたふりをするだけだ。」
鮒口「店が流行りだして、それがわかった。あの金は時効まで使えないから、商売を頑張るしかなかったんだ。」
悠「……それで繁盛するとは皮肉なもんだな。」
鮒口は唇を噛んでうなだれた。
ペンションの外では、近所の住民たちががやがや騒いでいる。あたりに警察車両が何台も停まっているから、不審に思ったのだろう。まだマスコミは来ていないが、あしたには大変な騒ぎになりそうだった。
事情聴取が終わって、みんなリビングダイニングで休憩した。
囲炉裏のあるテーブルは使えないから、七人はふたつある四人掛けのテーブルに腰を降ろした。ステラと団子沢は新婚夫婦の様な面持ちで、肩を寄せ合っている。
朝食の時間はとっくに過ぎているが、準備をするどころではなかった。悠と城は、部屋の隅で捜査員たちと立ち話している。
葉月「あたしの推理も、まんざらでもなかったでしょ。」
和斗「五億円がこの付近に隠されてるって、最初からいってましたよね。」
葉月「でも、お金の隠し場所がこのペンションとは思わなかった。」
和斗「葉月さんは、今日チェックアウトの予定でしたが……」
葉月「これじゃ、まだ帰れないよ。」
和斗「よかった。いや、予定が狂ってよくないでしょうけど……」
葉月「ううん。あたしもよかった。和斗君と一緒にいたいし」
和斗は顔が火照るのを感じつつ
和斗「……僕もです」
葉月「自分の原稿はボツったけど、この事件のことを書こうと思うの」
和斗「そりゃあいい。大ニュースですもんね。」