ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【8】

ー大江戸学園:林内ペンションー

ステラ「あたし、今まで、ダーリン、愛してるよ。」

団子沢「すまん。今までのことを許してくれ。これからは心を入れ替えて働く。」

団子沢はステラと抱き合ったまま嗚咽した。

皿井「よかったですね、ステラさん。」

葉月は目頭を押さえ、釜石は拳で目をこすった。飴矢もいつになく、しんみりした表情だ。

ふとペンションの外で、車が停まる音がした。

まもなく玄関のドアが開いて、突風が吹きこんできた。しかめっ面の鮒口が入ってくると、急いでドアを閉めた。今夜は作務衣ではなく、黒いジャージの上下を着ている。

鮒口「こんちくしうめ。こんな台風の中を呼び出しやがって。」

皿井「すみません。わざわざきていただいて」

皿井が頭を下げた。鮒口は腕時計に目をやった。

鮒口「おっ、いま日付が変わった。残念ながら時間切れだな。」

はっとして振り子時計を見たら、ちょうどゼロ時だった。ステラと団子沢に気を取られて時間を見ていなかった。

葉月が落胆した表情でこっちを見ると、かぶりを振った。五億円強奪事件も、いま時効になったといいたいのだろう。

城「アナタ、わざと遅れましたね。」

馬鹿いえ、と鮒口はいって、どすんと椅子に座った。

鮒口「道路は水浸し、視界も悪い。これでも急いできてやったんだ。しかし、もう期限が過ぎた。このペンションは、俺の物だ!」

悠「勝手にしろ。そっちがその気なら、血の気が多いのを呼ぶまでだ。このペンションはぶっ潰して、お前の店にも若い衆を居座らせてやる。」

鮒口「そんなことをしやがったら、警察を呼ぶぞ!」

悠「警察が怖くてこんなことを言えるか。けど、台風の中せっかく来てくれたんだ。飯を食っていけ。」

はあ?と鮒口は眉をひそめた。

鮒口「なに呑気なことを抜かしとる。俺はもう帰るが、朝になったらペンションから出ていけっ!」

悠「話しはまだ終わってない。お前は一昨日の夜、、ここの料理をさんざんコケにしたな。」

鮒口「あたりまえだ。あんな安物のウナギが喰えるかっ。」

悠「今夜はお前に食わせたい料理がある。」

鮒口「くだらん。俺は一流の料理しか食わんといったはずだ。」

悠「ふー……なら、話は終わりだ。ただ、こっちのメンツを潰したら、どうなるか、わかってるんだろうな。」

ゴッ、と左の拳をテーブルに叩きつけた。和斗はギョッとした。木製といえど頑丈なテーブルに拳がめり込んでいる。
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