ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【8】

ー大江戸学園:林内ペンションー

葉月「お金は、どこから借りてるんですか?」

葉月が聞いた。皿井は助けを求めるように悠を見た。

悠「構わない。言え。」

皿井はため息をついてなずくと

皿井「鮒口さんです。」

えっ、と飴矢が叫んだ。

飴矢「どうして鮒口さんに?」

皿井「鮒口さんには、ときどき経営の相談に乗ってもらったんです。そのとき資金繰りで困ってるなら融資しようかっていわれて、ついお金を借りたんです。そうしたら借金がどんどん膨らんで……」

四日前の午後、期限までには必ず、と皿井は電話で誰かと話していたが、電話の相手は鮒口だったのだ。二日前の夜、鮒口はここに来たとき、さては借金が焦げ付いてトンズラしたか、ともいっていた。

釜石「個人の借金だろ。待ってもらえよ。」

と釜石が言ったが、皿井は首を横に振った。

皿井「無理です。このペンションを担保として抵当権をつけられてるので……。」

釜石「抵当権かあ。それじゃ金を返さねぇと、差し押さえられちまうなあ。」

ステラ「このペンション、好きよ。やめないで。」

ステラがいった。あたしもです、と葉月が言った。

葉月「悠さん、どうにかならないんですか。」

悠は皿井に向かってスマホを貸せといった。皿井がスマホを渡すと、悠はそれをテーブルに置いた。

悠「今から鮒口に電話しろ。金が用意できたってな。」

皿井「えっ。どうしてそんな嘘を……」

悠「いいから電話しろ。通話はハンズフリーにしてある。」

皿井はおずおずとスマホに手を伸ばして、鮒口に電話した。呼び出し音がしばらくなってから、何だ、こんな時間に、と鮒口の不機嫌な声がした。

皿井「夜分にすみません。実は借りたお金を返済したいのですが……」

『嘘をいうな!お前に金が作れるはずがない!』

皿井は悠に目をやってから

皿井「う、嘘じゃありません。返済させてください。」

『金ができたとしても、もう遅い。あきらめろっ!』

鮒口が怒鳴ったとき、悠がスマホに口を寄せた。

悠「おい鮒口。皿井には、おれ達も金を貸してんだ。担保の件で話しをつけようじゃねぇか。」

『その声は、このあいだのチンピラだな。ひっこんでろ。』

悠「誰に向かってものをいってんだ。いますぐこっちにこねえと、若い衆呼んでこのペンションをぶっ壊すぞ。」

『なんだと。そんなことさせるかっ!』

鮒口は怒鳴って電話を切った。
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