ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【8】

ー大江戸学園:林内ペンションー

今日のメニューは豚の角煮、ガーリックシュリンプ、枝豆と玉ねぎのコーンサラダだ。角煮は白ネギと一緒に小鉢に盛りつけ、練りからしを添えた。ガーリックシュリンプはレモンとバゲットをつけて皿に盛った。

味見をしてみると、豚の角煮は箸でほぐれるほど柔らかく、こってりした脂の甘みがたまらなかった。ガーリックシュリンプはエビがぷりぷりしていて、ニンニクの香りと唐辛子の辛さが敷く欲をそそる。

枝豆と玉ねぎのコーンサラダは具材の食感が新鮮で、酸味の中に旨味がある。豚の角煮とガーリックシュリンプが濃厚なだけに、さっぱりした味わいが口の中をスッキリさせる。

時刻は六時になったばかりなのに、リビングダイニングはもう客でにぎわっている。葉月と飴矢、ステラと釜石に加えて、ゆうべよりも近所の住人が増えた。

鮒口と揉めたから客足が遠のくかと思ったが、悠が作り直した料理のおかげで、かえって興味を持ったらしい。

和斗がリビングダイニングにいくと、たちまち注文が相次いだ。

葉月は料理を見るなり感動した面持ちで。

葉月「わたしがお肉と海鮮っていったから、悠さんが考えてくれたんだ。でも買い出しの時は、何ができるか全然分からなかった。あー美味しい。原稿が終わったから、今夜は遠慮なく飲めるわ。」

葉月と一緒に飲みたかったが、それができないのが辛い。

飴矢は旨いを連発して生ビールをあおる。

飴矢「角煮はホロホロだし、煮汁がしみた白ネギが甘くて、ご飯が欲しくなる。海老はもちろんうまいけど、油に染みたバゲットが最高だよ。」

城は豚の角煮をつまんで

城「辛子をつけるとこれは、美味しさが増しますね。」

ステラ「このエビ、フィリピンの、バケットシュリンプより、めちゃうまね」

釜石「なんだそれは?」

飴矢「殻付きのエビをスパイシーなソースに絡めた料理を出す店です。現地だと手づかみでライスと一緒に食べますよ。」

釜石はへぇというと、ジュースの瓶を手にすると

釜石「お嬢、いっぱい注がせてもらってもいいですか。」

及び腰で城に近づいた。城は困ったような笑顔を浮かべた。

城「あ、ありがとうございます。」

接客が一段落して厨房に戻ると悠は包丁をていねいに洗っていた。怖い雰囲気なのはいつものことだが、今夜は更に凄みがある。

悠「オーナーから、連絡はまだないのか。」

和斗「はい。電話しても繋がりませんでした。留守電には連絡くださいっていれたんですけど……」

悠はうなずいて、包丁を片付ける。

悠「〆にチャーハンがあるから、客に伝えて来い。細かく刻んだ角煮を具にして、隠し味に煮汁を使うとコクが出て旨い」
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