ｰ大江戸学園:林内ペンションｰ

和斗が作業をしているあいだ、悠は豚バラのかたまり肉を四、五センチ角に切った。続いて白ネギを鍋の幅に合わせて切り、鍋そこに敷き詰めた。その上に皮を剥いたニンニクと豚バラを乗せ、具材が浸かるまで煮汁を入れた。

悠「鍋に蓋をして最初は強火、沸騰したら弱火でじっくり煮込む。角煮が出来上がるまでに時間はかかる。」

それを聞いてようやく、作っているのが豚の角煮だと分かった。

ときどき鍋の様子を見ながら一時間ほど煮込んだころ、他の料理の準備にとりかかった。悠は枝豆を茹でて皮をむくように言った。

枝豆は居酒屋用に常備してあるが、なぜそのまま出さないのか。疑問に思いつつ、皮を剥いた枝豆をボウルに入れた。

悠は玉ねぎを横に薄切りし、少し水にさらし手から手で握って水気を切った。それからコーン缶を開けて汁を捨て、枝豆と一緒にボウルに入れた。

和斗「それは?」

悠「ここに酢とオリーブオイルを二対一の割合でいれ、塩コショウとレモン汁を絞る。全体をかき交ぜたら、ラップをして冷蔵庫に仕舞う。」

和斗「は、はい。」

どうやらこれはサラダらしい。

悠は休む間もなく、次の指示を出してきた。

悠「エビをボウルに入れて片栗粉と塩を揉みこめ。すこし経ってから、流水で汚れを洗い流せ。汚れが取れたら海老の水気を拭く。」

実家の母は剥き海老をそのまま使っていたか面倒な気がしたが、悠にいわれたように洗ってみると、たくさん汚れが出てきた。

和斗「うわ…」

悠「エビは下処理をすることで臭みが取れ、張りのある食感になる。」

悠はニンニクをみじん切りにして、トマトをくし切り、卵をボウルで溶いた。そのあと深めのフライパンにオリーブオイルをたっぷり入れて、みじん切りにしたニンニクを弱火で加熱した。

ニンニクに火が通ってきたころ、悠はエビと唐辛子の輪切りをフライパンに入れ、更に炒めた。

海老の色が変わってきたところで、赤い粉末をたくさん振りかけた。

和斗「それ……全部唐辛子ですか?」

悠「パプリカの粉末だ。パプリカをいれるのは彩をよくするためだ。もっと辛いのが好きなら、一味唐辛子やカイエンペッパーを足せばいい。最後に塩で味付けし、粗びきのブラックペッパーと乾燥パセリを振って完成だ。」

和斗「これは、なんていう料理ですか?」

悠「ガーリックシュリンプだ。ガーリックシュリンプは、本場のハワイだと殻つきのまま食べることも多い。皮をむいて食べる場合も、殻付きの有頭海老を使った方が旨いが、予算を考えて剥き海老にした。」