ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【8】

ー大江戸学園:林内ペンションー

ふたりはスーパーをでてペンションに向かった。

上り坂の国道を走っていると、ぼさぼさ頭の男がとぼとぼ歩いていた。追いこしざまに顔を見たら、胡桃沢だった。

いつのまにペンションを出たのかわからないが、レジ袋をさげているから、近い方のスーパーへ買い物に行ったらしい。

和斗「胡桃沢さんって、うちの食事はどうして食べないのかな。」

和人がそう呟いたとき、あっ、と葉月が道路脇の森を指さした。

葉月「あそこにいるの、小鳥遊さんと城ちゃんじゃない?」

和斗「え?」

森に目をやると、黒地に和柄の刺繍が入ったシャツと軍パンの男とトレーニングウェアの少女がいた。車を停めて声をかけようと思ったが、気付かれてはマズい気がしてそのまま通りすぎた。

葉月「いまの、小鳥遊さんと城ちゃんだったよね」

和斗「あんなところでなにしてたんだろう。」

葉月「もしかして、胡桃沢さんを待ち伏せしてたのかな」

和斗「でも、なんのために?」

葉月「ぜんぜん見当がつかない。でも事件と関係ありそうな気がする。」

葉月は顎に手を当てて考え込んだ。

その夜、夕食の時間になっても悠たちはやってこなかった。

森にはもういないだろうが、いまはどこで何しているのか。

ペンションについて夕食の準備をしていると、胡桃沢がもどってきた。それからは、いつものように部屋に籠っている。

悠たちが居ないと食材が余りそうだったが、七時をまわった頃、ステラと釜石たちがまた客を連れてきた。ゆうべきた顔ぶれに加え、新規の客もいる。たちまちテーブルは混みあって接客に追われた。

葉月は自分の夕食をあとまわしにして手伝ってくれた。料理を出す前に、葉月と味見してみると、ウナギのかば焼きはいまひとつ旨くなかった。

葉月「うーん、皮が固いかな。ちょっと臭みもある。」

和斗「身は厚いけど、脂っこいですね。」

葉月とそんな会話を交わしたが、いまさらどうにもならない。

飴矢はやはり口に合わないらしく、ほとんど箸が進まない。もっとも朝の電話が気になっているのか、文句も言わずスマホをいじっている。

ステラと釜石もウナギのかば焼きは残して、べつのつまみを食べている。つれの客たちは話に夢中で、飲んでばかりいる。

九時になって、悠と城がやってきた。悠はテーブルのウナギをちらりと見てから言った。

悠「飯はあとでいい。先に生ビールと……お前は?」

城「じゃあ、冷たいお茶をお願いします。」
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