ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【8】

ー大江戸学園:林内ペンションー

カプレーゼは、ヘタを取ったトマトを一センチほどにスライスして水気を抜く。その上にうモッツアレラチーズとバジルを乗せ、粗びきのブラックペッパーと岩塩を振り、オリーブオイルをかける。

まかないの時間が遅くなりそうだったから、味見を兼ねて食べてみると、牛筋カレーはゆで汁で伸ばしたが絶品で、自分で作ったとは思えないほどの旨さだった。

牛筋はスプーンでほぐれるほど柔らかく、濃厚な肉の味わいは高級な牛肉よりはるかに美味しい。

カプレーゼは、爽やかなバジルの香りとトマトの酸味にモッツアレラチーズのコクがマッチして、これだけでつまみになる。見た目も鮮やかだから、牛筋カレーのサイドメニューに持ってこいだった。

客たち二も大好評で、牛筋カレーのおかわりはもちろん、生ビールや酎ハイの注文が相次いだ。

飴矢はものすごい勢いでおかわりを三杯食べていった。

飴矢「牛筋カレーは反則だよ。下処理がちゃんとしてると旨すぎるもん。」

葉月「朝のスクランブルエッグもトロトロだったけど、牛筋もトロトロでたまんなく美味しい。定番のメニューにしたら絶対売れるよ。」

牛筋カレーはステファニーと釜石にも大好評だったが、定番メニューにしたら牛筋を煮込むので毎日大変だろう。

リビングダイニングが込み合っているせいか、悠と城は夕食を終えると、まもなく帰っていった。悠のレシピのお陰で助かったが、ヤクザと関係があると思ったら、素直に感謝できない。

悠と城は明日の朝はこれないのでで朝食は必要ないということだった。なにを作ればいいか聞きたかっが、悠に頼りたくなくて我慢した。

あしたの朝食は、自分で作るつもりだった。

悠たちが居ないのなら、葉月と飴矢の分だけ作ればいい。今日買い出しにいった時も明日の朝食に使えそうな食材も買ってある。

和斗が接客をしていると、二階から足音がして胡桃沢が降りてきた。胡桃沢は何故か階段の途中で足を止め、首を伸ばしてリビングダイニングをのぞき込んだ。と思った瞬間、あわてた様子で二階に引き返した。

葉月はこっちを見て首をかしげたが、他の客たちは胡桃沢の行動に気付いていないようだ。胡桃沢はなぜ二階に戻ったのか。

客の中に顔を合わせたくない人物が居るのか、それとも他に理由があるのか……。みすぼらしい格好といい素泊まりといい、胡桃沢のことがますます不審に感じられた。
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