ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【8】
ー大江戸学園:林内ペンションー
葉月「お金があれば、投資って生き方もありですよね。いまはもう昔みたいなライフプランは機能してないから」
和斗「昔みたいなライフプランって?」
葉月「例えばいい学校を出て、いい会社に就職して、結婚をして子供を作って、夫は会社で昇進して妻は専業主婦。定年後は孫が生まれて、夫婦で旅行に行ったり趣味を楽しんだり、のんびり老後を過ごす、とか……」
和斗「あー、うちの両親もその考え方に近いです。正社員になれって、うるさいし」
飴矢「要するに、絶対的な価値観がなくなったんだよ。生活が多用化したともいえるけど、こういう風に生きるべきだって、お手本がない。中高年が路頭に迷ってるくらいだから」
葉月「昔は一流企業に就職したら、年功序列で昇進したし、終身雇用で安定したって聞きますよね。」
和斗「でも、やっぱりフリーターは厳しいです。何か専門的な知識や技術がないと、ずっと下働きのままだし……」
葉月「あたしもフリーだから、似たような感じよ。小鳥遊さんはどう思う?」
悠「いつの時代も変わらないものを身につけるしかない」
葉月「いつの時代も変わらない物、ですか?」
悠「ああ、専門的な知識や技術は無駄じゃないが、最新のものほど時代とともに古びてしまう。」
飴矢「でも、最新のものを追いかけなきゃ、時代に取り残されますよ。テクノロジーの進歩で、世の中はどんどん便利に効率的になっていくんだから……。」
悠「たしかにテクノロジーの進歩によって、生活は効率的で便利になった。しかしそれと比例して、日常には閉塞感と不安が増していく。」
葉月「どうしてそうなるのかな。本来なら便利で効率的になったんだから、皆楽になるはずなのに……。」
悠「誰もが便利で効率的なら、それが普通になる。時間が短縮された分を余暇に回せれば別だが、そうはならない。処理する作業が増えるだけだ。」
葉月「単純に考えたら、交通機関もそうですよね。みんなが早く移動できるから、その分スケジュールが過密になるわけだし……じゃあ、あたしたちは、何を身につければいいのかな。」
悠「時代の対極にある物だ。」
そういうと悠は手帳を取りだしさらさらとペンを走らせ、カレーのレシピを書き、そのページをちぎるとテーブルにおいて外へと出ていった。
和斗は朝食のあと食器を下げ、洗いものや片づけを済ませ、厨房で賄いを食べた。ベーコンやスクランブルエッグは冷めていたが、それでも十分うまかった。
葉月「お金があれば、投資って生き方もありですよね。いまはもう昔みたいなライフプランは機能してないから」
和斗「昔みたいなライフプランって?」
葉月「例えばいい学校を出て、いい会社に就職して、結婚をして子供を作って、夫は会社で昇進して妻は専業主婦。定年後は孫が生まれて、夫婦で旅行に行ったり趣味を楽しんだり、のんびり老後を過ごす、とか……」
和斗「あー、うちの両親もその考え方に近いです。正社員になれって、うるさいし」
飴矢「要するに、絶対的な価値観がなくなったんだよ。生活が多用化したともいえるけど、こういう風に生きるべきだって、お手本がない。中高年が路頭に迷ってるくらいだから」
葉月「昔は一流企業に就職したら、年功序列で昇進したし、終身雇用で安定したって聞きますよね。」
和斗「でも、やっぱりフリーターは厳しいです。何か専門的な知識や技術がないと、ずっと下働きのままだし……」
葉月「あたしもフリーだから、似たような感じよ。小鳥遊さんはどう思う?」
悠「いつの時代も変わらないものを身につけるしかない」
葉月「いつの時代も変わらない物、ですか?」
悠「ああ、専門的な知識や技術は無駄じゃないが、最新のものほど時代とともに古びてしまう。」
飴矢「でも、最新のものを追いかけなきゃ、時代に取り残されますよ。テクノロジーの進歩で、世の中はどんどん便利に効率的になっていくんだから……。」
悠「たしかにテクノロジーの進歩によって、生活は効率的で便利になった。しかしそれと比例して、日常には閉塞感と不安が増していく。」
葉月「どうしてそうなるのかな。本来なら便利で効率的になったんだから、皆楽になるはずなのに……。」
悠「誰もが便利で効率的なら、それが普通になる。時間が短縮された分を余暇に回せれば別だが、そうはならない。処理する作業が増えるだけだ。」
葉月「単純に考えたら、交通機関もそうですよね。みんなが早く移動できるから、その分スケジュールが過密になるわけだし……じゃあ、あたしたちは、何を身につければいいのかな。」
悠「時代の対極にある物だ。」
そういうと悠は手帳を取りだしさらさらとペンを走らせ、カレーのレシピを書き、そのページをちぎるとテーブルにおいて外へと出ていった。
和斗は朝食のあと食器を下げ、洗いものや片づけを済ませ、厨房で賄いを食べた。ベーコンやスクランブルエッグは冷めていたが、それでも十分うまかった。