ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【8】

ー大江戸学園:林内ペンションー

悠「次にボウルの卵に塩コショウを振って振って、泡だて器で8の字をかくようにかき混ぜろ。卵が均等に混ざったら、ボウルごと鍋に入れて、更にかき混ぜる。」

和斗「ボウルごとですか?」

沸騰した鍋の湯にボウルをつけて、泡だて器でかき混ぜると、卵がゆっくり固まってきた。悠はそこに軽く塩を振り、大さじ二杯くらいのバターを入れる。

悠「そろそろトーストを焼け。」

和斗は教わった通り食パンを霧吹きで湿らせてから、オーブントースターに入れた。トーストが焼けるあいだに、ツナと玉ねぎのポテトサラダを小皿に盛った。

卵がスクランブルエッグに近い硬さになった頃、悠は残しておいた黄身をボウルに入れ、木べらで全体をかきまぜた。続いて火を止め、ボウルを鍋からあげると、スクランブルエッグをベーコンと一緒に皿に盛った。

こういうスクランブルエッグには、スプーンを添えてだすという。悠に味見をするように言われて一口食べると、シルクのような滑らかさに驚いた。クリームのような舌触りで濃厚なコクと旨味がある。

和斗「美味しいです。こんな作り方があるとは知りませんでした。」

悠「ウー・ブルイエ。フランス風のスクランブルエッグだ。」

和斗「最後に黄身を入れるのは、どうしてですか?」

悠「色合いが良くなるのと、黄身の味わいを生かすためだ。」

出来上がった料理を運ぶのは、葉月と城が手伝ってくれた。

悠の影響か、みんないただきますと合掌してから食べ始めた。

葉月がスクランブルエッグをスプーンで口に運ぶと、目を見張った。

葉月「こんなスクランブルエッグ、食べたことない。とろっとろで美味しい。」

和斗「それは悠さんが作ってくれました。」

飴矢はスマホでスクランブルエッグの写真を撮った。

飴矢「これはフランスのミッテラン元大統領の好物だったウー・ブルイエだな。こんなところで食べられるなんて思わなかった。こうやって食べると最高だよ。ベーコンもカリカリでいうことなし。」

飴矢はさすがに料理に詳しい。飴矢はスクランブルエッグとベーコンをトーストに乗せて食べた。

葉月「ポテトサラダも凄く美味しい。飴矢さんはどうですか?」

飴矢はツナと玉ねぎのポテトサラダを食べると、納得したようにうなずいた。

飴矢「素人が作ったポテサラは皮をむいて茹でるから水っぽかったり、粗熱が取れないうちに味付けしてマヨネーズが分離してるのが多いけど、これは旨い。」

飴矢に褒められて、ほっとした。
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