ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【8】

ー大江戸学園:林内ペンションー

飴矢「あんがい、仕事をさぼりたくなっただけだったり」

和斗「まさか……そんなことはないと思います。」

ふと悠と皿井のやり取りを思いだしたゆうべ悠が、他にやりたいことがあるんじゃないかと聞いた時、皿井はうろたえた様子だった。さらに仕事に身が入ってないといわれて、急に元気がなくなった。

飴矢「ところで今日の朝食はなに?」

飴矢に聞かれてメニューを言った。

葉月「あたしポテサラ大好き。和斗君が作ったの?」

和斗「はい」

葉月「すごい。楽しみだなー。」

和斗「じゃあ、すぐに用意します。」

急いで厨房にもどるとコンソメスープを温め、冷蔵庫からベーコンと十個入りパックの卵を取りだした。レシピによれば、ベーコンは油を引かなくても、しみでた脂でカリカリに焼けるらしい。

大型のフライパンにベーコンを並べ、弱火で焼き始めた。続いて卵のパックを開けようとしてオレンジ色のテープを引っ張ったら、途中で切れた。

なんだよ、これと無理やりこじ開けようとしたとき、勢い余ってパックが床に落ちた。ぐしゃっと、大きな音がした。

あちゃー、と思わず宙を仰いだら、城が厨房を覗いた。

城「今の音は?」

和斗「すいません。玉子を落としちゃって……」

パックを拾いあげると無事だったのは三つだけで、他の七戸はひびが入っていた。あらら、と城がいった。

城「どうするんですそれ?」

和斗「お客様に出せませんから、捨てるしか……」

しかし目玉焼きの代わりになるものはない。途方に暮れていると

悠「食べ物を安易に捨てるな。割れたタマゴでも問題ない。」

いつのまにか、厨房の入り口に悠が立っていた。

和斗「は、はい…」

悠「ただ万が一を考えて、黄身も全体に加熱した方がいい。」

和斗「という、何を作れば?」

悠「スクランブルエッグだ。大きめの鍋に湯を沸かせ。それからひびが入った卵をボウルに割り入れて、殻が混じってないカチェックしろ。」

スクランブルエッグとは思い付かなかったが、なぜ湯を沸かすのか。疑問に思いつつひびが入った卵をボウルに割り入れた。幸い殻は混じっていない。

悠はガスコンロの前に立って、フライパンで焼いているベーコンに白いものを振りかけている。

和斗「それはなんですか?」

悠「砂糖だ。ベーコンをカリカリに焼くには、少量の砂糖をまぶす。わずかに甘みが出るから、うまみが増す。」

和斗「そうなんですか。あ、卵の殻はありませんでした。」
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