ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【8】

ー大江戸学園:林内ペンションー

ポテトサラダは作ったことがないし、手間もかかりそうだったが、悠は安い食材でも手間を惜しむなと言っていた。皿井が居ないのに自分ひとりで作ったら、葉月は感心するかもしれない。

レシピには所要時間十五分とあるから、何とかなるだろう。

和斗は鍋に湯を沸かすと、水で洗ったジャガイモを皮つきのまま茹でた。

スマホのレシピには、ジャガイモを皮つきのまま茹でることで旨味が逃げないと書いてある。ジャガイモは竹串が通るくらい茹でたら、鍋からあげて皮をむき、熱いうちに木べらで潰して粗熱を取る。

玉ねぎは薄切りにして水でさらしたあと水気を切り、ジャガイモを潰したボウルに入れる。少し油を切ったツナもボウルに入れ、マヨネーズと顆粒コンソメとブラックペッパーを混ぜて味付けする。

レシピを見る分には簡単だが、ジャガイモの皮をむくのに手間取ったり、レシピを何度も読み返したりしたせいで、出来上がるのに四十分もかかった。

続いてブナシメジのコンソメスープを作ったら、七時五十分になった。

あと十分で凝った料理は作れないから、ベーコンエッグに決めた。といって作り置きすると冷めてしまうので、宿泊客が席に着いてから調理しようと思った。

普段朝食を食べにくる時間は、葉月と飴矢が八時過ぎだ。悠と城は宿泊ではないが余裕がある時は朝にも顔を出しに来てくれるが時間はマチマチだ。

ところかが、今朝に限って四人はほとんど同時に顔をそろえた。和斗はあたふたしながらリビングダイニングにいくと

和斗「み、みなさんお話があります。実は皿井さんの奥さんが急病になって……」

皿井が居ないあいだ、サービスに行き届かない点があるかもしれないが、同か多めに見て欲しいと告げた。

皿井さんは大変ね、と葉月が言って。

葉月「でも和斗くんは無理しなくていいよ。忙しいときは、あたしも手伝うから。」

飴矢「ぼくも平気だよ。ここのサービスは、そもそも大したことないし。」

城「私たちは宿泊しているわけではないですし問題ないですよ。」

和斗「ありがとうございます。」

和斗は頭を下げた。

それにしても、と飴矢が言った。

飴矢「皿井さんはちょっと無責任だな。奥さんのことが心配にしても、バイトの和斗君に仕事を全部押し付けるのは……」

葉月「まあね。それだけ信頼してるのかもしれないけど」

和斗「僕は大丈夫です。ただ皆さんにご迷惑をかけないか心配なだけで……」

城「立派ですね。しかし、本当にお嫁さんが急病なんでしょうか?あまりにも急すぎるというか……。」

飴矢「案外仕事をさぼりたくなっただけだったりして。」
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