ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【8】

ー大江戸学園:林内ペンションー

そこで画面は、別のニュースに切り替わった。

ステラ「あー、ビデオとっとければよかった。」

釜石「おめえが映ってたのは、ほんの一瞬じゃねぇか」

葉月「警察には、他にどんなことを聞かれました?」

ステラ「私のダーが、どこにいるのか。連絡取れないか、とか。」

城「ダー?」

ステラ「ダーリンだよ。」

城「だ、だーりん?」

葉月「どうしてそんなことを?」

釜石「事件のちょっと前に亭主がいなくなったから、疑われたのさ。だいたい、こいつの亭主は博打好きだったからな。」

ステラ「違うよ。ダーは、犯人じゃない。馬鹿だけど、優しい人。」

釜石「けっ。やさしい亭主が何年も家を空けるかよ」

飴矢が皮せんべいをバリバリ食べながら言った。

飴矢「五億円あったら、世界中の旨いものを食べ歩けるな。」

釜石「さんなこといって、意外とアンタが犯人じゃねぇのか。ずいぶん旨いものを食ってるみたいだし」

釜石がそういうと、飴矢は頬を膨らませていった。

飴矢「まさか、そんなわけないじゃないですか。」

悠と城の反応が気になったが、、二人の表情に変化はない。皿井は興味なさそうに厨房へ引っ込んだ。



その夜、寝室代わりの四畳半に入ったのは十一時半だった。

部屋にエアコンはないが、夜は涼しいから寝苦しくはない。どうしても暑いときは窓を開ければ、網戸から涼しい風が入ってくる。

和斗は布団に横たわると、最新ニュースやトレンドをスマホでチェックした。ネット上には、今日も様々な情報や意見が飛び交っている。

何が正しくて何が間違っているのかわからないが、世の中から自分は取り残されているように感じる。

自分の将来をじっくり考えたくてここへ来たのに、頭に浮かぶのは葉月とのことばかりで、何も進展がない。両親には幼いころから

『お前は、のんびりしすぎている。』
『もう少し、シャキッとしなさい。』

よくそういわれた。

のんびりしているつもりはないが、一人っ子のせいか、皆と歩調を合わせるのは苦手だった。闘争心も薄いから、誰かと何かを競う時でもマイペースでしか動けない。

漠然とそれが自分らしさのように思っていた。本音を言えば、もっと積極的になりたいが、そのためにはどうすればいいのか。

取り留めなくそんなことを考えていたら、しだいにまぶたが重くなった。どのくらい眠ったのか、夢も見ないで熟睡していたら、誰かが耳元で囁いて肩を揺さぶった。
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