ｰ大江戸学園:林内ペンションｰ

ふたりは厨房に入った。皿井はまず鶏皮を水洗いしたあと、鍋で茹でていた。ところが途中でレシピが分からなくなったらしく。

皿井「これでよかったのかな。ちょっと小鳥遊さんを呼んでくる。」

急ぎ足で厨房を出ていった。しばらくして悠は皿井と一緒に厨房に入ってきた。

悠「なぜ一度で覚えない。レシピは買いだしの前に伝えたはずだ。」

皿井「……すみません。」

悠「あやまっても仕方がない。おれはあくまでアドバイザーだ。いつまでも助言してやれるわけじゃないんだからな。これは粗熱が取れるまでさます。その間にラッキョウと青ネギを刻んで、キャベツを一口大にちぎれ。」

皿井「は、はい。」

悠はそういって、茹であがった鶏皮をザルにあげた。

皿井はラッキョウと青ネギを包丁で刻み、和斗はキャベツを手でちぎった。

この時点でも、悠が何を作ろうとしているのかわからない。時刻は五時を回って夕食の時間が近づいてきた。

悠は粗熱が取れた鶏皮を二手にわかると、一方を細かく包丁で刻み、もう一方は大きめに切った。続いて、細かく切ったほうの鶏皮をボウルに入れてポン酢であえる。

悠「ラッキョウをマヨネーズであえ、粗びきのブラックペッパーを混ぜる。次に鶏もも肉にうすく片栗粉をまぶす。」

悠の指示に従って、皿井と和斗は作業を進めた。悠は二つあるガスコンロにそれぞれ油を引いたフライパンを乗せて、大きめに切った鶏皮と鶏もも肉を焼き始めた。どちらも弱火で、鶏もも肉は皮目から焼いている。

やがてフライパンの鶏皮から、じわじわと脂がしみ出てきた。

悠はそこで強火にすると、しみ出た油に浸かった鶏皮をカリカリに揚げ、キッチンペーパーを敷いた皿にとって、塩コショウを振った。

和斗「これは?」

悠「皮せんべいだ。味見してみろ。」

悠にそういわれて、ひとつつまんでみると、パリパリした食感で鶏皮の旨味が凝縮されている。悠は焼き上がった鶏もも肉をまな板にとって、包丁でそぎ切りにした。その後鶏ももを皿に盛り、ラッキョウとブラックペッパーを混ぜたマヨネーズを上にかけた。皿井が目を丸くしていった。

皿井「これはタルタルソース、ってことはチキン南蛮だったんですね。」

悠「ああラッキョウは南蛮酢とピクルスの代わりだ。」

これも味見してみたが、一口食べたとたん驚いた。

悠が言った通り、ラッキョウの甘酸っぱさとサクサクした食感がマヨネーズに絡んで、絶品のタルタルソースになっている。それをこんがり焼けた鶏もも肉につけると、まさしくチキン南蛮の味になる。このタルタルソースは簡単だし、トンカツやフライにかけても旨そうだ。