ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【8】

ー大江戸学園:林内ペンションー

城「やっぱり、へたばってましたか。ペンションまで送りますから乗ってください。」

和斗「乗ってて……え、キミがまさか引っ張っていくき?!」

険しくはないとはいえ坂道を大の男をリヤカーに乗せて小柄な女の子が昇っていくなど無茶だ。

城「このぐらいなら大丈夫です。さっ、どうぞ。」

どうするかと逡巡している間に飴矢が立ちあがったが、足元がふらついている。和斗は飴矢に肩を貸してリヤカーの荷台に乗せた。

和斗「城…さんは、どうしてここに?」

城「あんまり遅いから、悠さんに様子を見て来いといわれたんです。和斗さんも載って下さって大丈夫ですよ。」

和斗「いや、流石にそれは……買ったものだけ乗せさせてもらうよ。」

城はリヤカーをその場でUターンさせて坂を登った。飴矢は重病人のようにぐったりした表情でまぶたを閉じ、仰向けに寝転がっている。

すると、軽快な足取りで城は進みだした。小柄な身体にどれほどの力があるのかと驚き、後ろから押して手伝おうとした自分が置いていかれそうになり、思わず飛び乗ってしまった。

しかし、そんなことも意に返さず城はリヤカーを押しながらグングンと坂を登っていき、あっというまにペンションについた。

飴矢はいまだにまぶたを閉じたままうわごとのように呟いた。

飴矢「喉が渇いた…。あと腹も減った……。」

和人が肩をゆすると、飴矢はようやく目を開けた。

和斗「もう着きましたよ。なかで冷たいものでも飲みましょう。」

城にしっかりと頭を下げて礼を言って玄関に入った。リビングダイニングには悠と葉月と皿井が居た。

「「大丈夫でしたか」」

葉月と皿井が異口同音に聞いた。ええまあ、と和斗は苦笑した。飴矢は早速エアコンの真下に行くと、水をかくように両手を振った。

飴矢「コーラ、コーラ。コーラちょうだい。」

皿井が腰を浮かしたが、悠をそれを制した。

悠「駄目だ。コーラはない。」

飴矢「そんなあ」

悠「麦茶ならあるぞ。」

飴矢「なんでもいい早く飲みたい。」

悠「飲んでもいいがあそこで飲め。」

悠は窓の向こうのウッドテラスを指さした。

飴矢「ど、どうして…」

悠「お前は賭けに負けたんだ。言うことを聞け。」

飴矢はふらふらしながら窓を開け、ウッドテラスの椅子に腰を降ろした。和人も外に出ると、葉月と皿井がついてきた。
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