ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【8】

ー大江戸学園:林内ペンションー

真っ青な空に白い雲が点々と浮かび、まばゆい日差しが照り付けてくる。飴矢は汗だくになりながらも意気揚々と歩いた。いつにも増して饒舌で、料理のうんちくや仮想通貨の儲け方を喋り続けていた。

四十分くらいで麓について、目当てのスーパーに入った。

飴矢は棒アイスとコーラを買い、コーラをその場でがぶ飲みした。

飴矢「あー、生きかえるわ。これで帰りも大丈夫だな。」

食材を変えそろえると、二人は店を出てペンションに向かった。和斗はレジ袋を両手に下げているが、飴矢は棒アイスを舐め舐め歩いている。

時刻は二時を回って日差しは一段と強くなった。それでも気温は三十度くらいだろうが、坂を登っていると猛暑に感じる。

歩き始めて十分ほど経つと、飴矢はしだいに口数が少なくなった。スーパーまではくだりだったから四十分で着いたが、帰りはのぼりだけに一時間以上かかるかもしれない。といって、だらだらしていると、豚肉をはじめ冷蔵が必要な食材が暑さで痛んでしまう。

和斗はピッチを上げて坂を登ったが、飴矢の歩調はどんどん遅くなる。

和斗「飴矢さん、大丈夫ですか」

何度も振りかえって聴いたが、返事もない。それどころか息が上がって、しょっちゅう立ち止まるようになった。飴矢のたるんだ顎から汗がしたたり落ち、Tシャツは水に浸かったようにびしょぬれだ。

坂の真ん中あたりまで来ると、飴矢はぜえぜえ荒い息を吐いた。

飴矢「だめだ。足が痛くて歩けない。」

へなへなと地面に座りこんだ。和斗は慌てて駆け寄った。

和斗「あとちょっとなんだから、がんばりましょう。」

飴矢「もう限界だってば。タクシー停めて」

和斗「タクシーなんてめったに通りませんよ。呼んだとしても、大分時間がかかるでしょうし。」

飴矢「じゃあ、ここにいるから先にいって」

和斗「そういうわけにいきませんよ」

飴矢「でもマジで動けないんだ」

和斗「悠さんとの賭けに負けていいんですか」

飴矢「いいよもう。死にそうだもん。」

押し問答しているうちに時間が過ぎていく。和斗にしても暑さとながある気のせいで体力を消費してるし、空腹と喉の渇きが激しい。

こうなったらペンションに電話して、皿井に迎えに来てもらうしかない。そう思ってスマホを手にしたとき、坂の上からガラガラと妙な音が聞こえてきた。視線を向けてみると、ペンションで大きな物を運ぶために使っているリヤカーがこっちに向かってくる。まもなくしてそばに止まると、悠のツレである城が声をかけてきた。
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