ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【8】

ー大江戸学園:林内ペンションー

飴矢「なるべく先入観がないよう努めてます。嫌な店主や従業員がいたって、褒めるときは、褒めますよ。」

悠「褒める分にはいい。けどネットで実名をだしてけなすのは商売の邪魔だ。文句があるなら匿名で書かず、その店に直接言え。」

飴矢「そんなこといってトラブルになったら面倒じゃないですか。まずい店は努力が足りないんだから、けなされて当然なんです。」

悠「自分はリスクを負わないで、高みの見物か」

飴矢「リスクは負ってます。料理の代金は払ってるんだから」

悠「ずいぶんと軽いリスクだな。その店に不満を感じたら、ブログでけなして憂さを晴らしてるんじゃないか」

赤かった飴矢の顔から血の気が引いた。

飴矢「僕はただ、美味しい物を食べたいだけなんです。それの何処がいけないんですか!!」

悠「人をけなしておきながら、自分は褒められたがっている。他人の仕事を利用して承認欲求を満たそうとするのは、安易かつ卑怯だ。」

飴矢「僕のブログだってアンチもいます。ネガキャンだってされるし」

悠「店の人間は匿名だけでなく、生身で勝負している。」

飴矢「僕のブログは月間十万ページビューですよ。その読者を否定するんですかっ!」

悠「否定はしないが、それだけ読者がいれば風評被害をもたらすだろう。」

飴矢「だから、そんな店は努力が足りないんです。」

悠「けなすだけなら誰にでもできる。どこをどう改善すればいいのかが問題だ。」

飴矢「僕はあくまで客なんだから、そんなことまで知りませんよ。」

悠「店の人間はどうでもいいのか」

飴矢「ええ。料理さえ美味しければいいんです。」

悠「他人を貶めることで自分の評価が上がるわけじゃない。いくら料理がまずい店であっても、店主や身内にとっては生活の糧だ。そこへ突然踏みこんで誹謗中傷をまき散らすのは、ヤクザより性質が悪い」

飴矢「や、ヤクザと一緒にしないでくださいっ!!」

飴矢はヒステリックに叫んだ。あのう、と皿井が口を挟む。

皿井「飴矢さんにうかがいたいんですが、今日のメニューはどう思われますか?」

飴矢「まずラーメンってのがヤダね。うまいラーメン屋は星の数あるのに、皿井さんが対抗できるわけがない。餃子だってそうでしょう。冷奴なんて家で食べるのと同じじゃん。」

皿井「言われてみればその通りですね。」

皿井はため息をついた。
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