ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【8】

ー大江戸学園:林内ペンションー

皿井「メイラード反応?」

悠「肉を加熱することで、糖とアミノ酸が反応して焼き色がつくことだ。メイラード反応によって肉の表面は褐色となり、旨味や香ばしさが増す。」

皿井「なるほど。でも強火で焼いて焦がしたくなくて……」

悠「焦がすのは炭化だから味が落ちるし、そこまでやくと中身もぱさぱさになる。表面をこんがりと焼きながら、たっぷり肉汁を残すのが理想的なステーキだ。といって表面しか焼けていないと、中は冷たいままだ。」

飴矢「最初のがそうだった。」

悠「肉の内部を温めるために、はじめは弱火で焼き、アルミホイルに包んで肉を休ませた。休ませる時間は、焼いた時間と同じだ。それは何度か繰り返すことで内部まで熱が通り、レアでも温かくなる。」

皿井「一度に焼いてしまおうとするから、中が冷たいんですね」

悠「薄い肉なら一度で火が通る。厚さによってどのくらい焼き、どのくらい休ませるか感覚を掴むことだ。」

皿井「肉を焼済ませた後はどうすれば?」

悠「肉を休ませたら、今度は強火で表面を焼き、メイラード反応を起こすつまり焼き色をつけたら完成だ。普通は強火で表面に焼き色をつけてから肉を休ませ、弱火で仕上げていくが、これは順番が逆になった。」

皿井「順番が逆になったのは、僕が中途半端な焼き方をしたせいでしょうか。」

悠「そういうことだな。」

皿井「あと、ニンニク醤油が合うと思ったんですが、塩の方がずっと旨いですね。」

悠「これはアメリカ産のランプ肉だろう。脂(サシ)の多い和牛や国産牛なら醤油も合うが、赤身を味わうなら塩がいい。塩は厨房にあった岩塩を使った。」

皿井「トマトサラダとポタージュは?」

悠「トマトは冷蔵庫にあった塩麹とあえ、少量のオリーブオイルを垂らして大葉を散らした。」

皿井「あの旨味とコクは、塩麹とオリーブオイルだったんですね。」

悠「コーンポタージュは、まずコーンを鍋にいれ、コーンが入っていた缶に半分の牛乳を注ぎ、同量のコンソメスープを足した。それをひと煮立ちさせて、パセリとブラックペッパーを振った。」

皿井「すごい。僕が作ったコンソメスープを活用するなんて。」

悠「ふつうに作るなら、コーンが入っていた缶いっぱいの牛乳に顆粒コンソメを少し入れるだけでいい。」

和斗「ガーリックライスもすごく美味しかったです。」

悠「ガーリックライスはフライパンに牛脂をひいて、みじん切りにしたニンニクと玉ねぎを炒める。火加減は弱火だ。ニンニクと玉ねぎに火が通ったら、いったん皿に取る。」

和斗「皿にとる?ご飯といっしょに炒めないんですか?」

悠「ニンニクは焦げやすいし、焦がすと苦みが出るからだ。続いてフライパンに飯を入れ、今度は中火で炒める。米粒がほぐれてきたらニンニクと玉ねぎを戻し、塩コショウで味を調える。最後に少量の醤油とバターを入れて、よくかき混ぜ、香りが立ったら完成だ。」

葉月「あのう、料理のプロなんですか?」

悠「いや、プロってわけじゃないが……ちょっとアドバイザーとして立ち寄らせてもらってる。」

「絶対アマチュアじゃないよ。」

飴矢「グルメブロガーとしても、そう思う。今日のことを記事にしよう。」

悠「おれたちの写真は撮るんじゃない。」

飴矢「えぇ……」
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