ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【8】

ー大江戸学園:林内ペンションー

少しの談笑のあと、このペンションの詳しい内情を聞いた。

まず客室は五部屋しかない小規模なつくり。そして、リビングダイニングには、十人掛けのテーブルと四人掛けのテーブルが二つある。十人掛けのテーブルは分厚い木製の天板のまんなかに囲炉裏があって、和の雰囲気を感じさせる。

リビングダイニングは居酒屋として、夜は一般客にも開放しているらしいが、いつも近所の住人しか来ないらしい。

悠「ということは……居酒屋のメニューのアドバイスが欲しい、ということですか?」

皿井「もちろんそれもありますが、うちは朝食も提供しているのでできればそちらのほうもお力をお貸しできればと……」

悠「ふむ…。わかりました。」

皿井「それでは力になっていただけると!」

悠「できる限りのことはやってみますが、正直こういうことは初めてなんでとりあえずしばらく様子見させてもらっていいでしょうか?」

皿井「大丈夫です。では、もう少ししたら夕食の時間なのでごゆっくりしていてください。」

そういう話になりしばらく待っていると近所の顔なじみのお客や宿泊客らしき人間が部屋から出てきたりと人間が集まりだした。

顔なじみの客は居酒屋メニューの冷奴や枝豆でビールを飲んでいる。そして宿泊客らしき女性には本日の夕食が運ばれてきた。メニューはステーキにライス、コンソメスープとトマトとコーンのサラダらしい。

それを見て、飲んでいた人もステーキを注文しだした。

だが、宿泊客らしきひとりがステーキを一口食べていった。

「これってミディアムレア?」

湯原「そうですけど……」

「それにしちゃあ、なかが冷たいな」

湯原「もうちょっと焼きましょうか」

「もういいよ。今よりマシになるとは思えないから。」

皿井「きょうは奮発したんですけどねぇ」

「奮発したって程じゃない。この牛肉は安物でしよ。」

皿井「飴矢さんの評価は厳しいなぁ。客足が遠のくから、ブログには書かないでくださいね。」

飴矢「ごめん。もう書いた。今日じゃなくて止まった初日の印象だけど。」

もう一人の宿泊客が食べるのを中断してスマホを手にした。彼女は素早く検索する。

「うわ、ホントだ。きついこと書いてる。」

皿井「どんなことをですか?」

「じゃあ、読みましょうか。アメッち宿泊記。今回は避暑ということでペンション、サライに泊まることに。客室が五部屋しかない小ぢんまりしたペンションで、アットホームな接客が売り。オーナーのSさんは人当たりはいいけど、料理はアマチュアだけに味はイマイチ。たとえば今夜の夕食、メインディッシュのポークソテーは肉はぱさぱさ、ソースは甘すぎでコンビニ弁当のほうがマシなレベル。続いて……」

皿井「わー、もういいです!!」
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